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今夜の番組チェック




2008年3月1日(土)




2008年3月1日(土)
御前崎菊川河口
晴れ
*Sail:ZONE 4.7(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 255
*Sail:ZONE 4.7(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 260


 冬型の気圧配置だ。
 朝方、雨音が聞こえたが、目を醒したときには菊川はいつもの晴天だった。プールサイド脇の駐車場ではセイルをセッティングしている人々――海へ行ってみると、風はすでに吹いていた。出艇しているセイラーのセイルサイズは4の下という感じだった。が、風はそれよりも弱いような気がする。5か?
 予想気圧配置の感じからは今日は4点代バリバリのオーバーでもおかしくないと思っていたのだが。
 寒気団が南下してきていないのか、思ったよりも暖かった。
 NG ACP 260を海岸へ運んだあと、年季が入りつつあるリグをセットした。いろいろあり、結構、時間がかかってしまう。選んだセイルサイズは4.7。そろそろ保温性に疑問符がつくセミドライに着替えてセイルを海岸へ運んだ。
 風は最初にチェックしたときよりも上がっていた。


 きついかな。
 それでも試しに、NG ACP 260 + 4.7のセットで出艇してみた。
 波のサイズはそれほど大きくない。たぶんちゃんと帰ってこれるだろう。
 アウトにでると、さすがに風はきつい。風を逃しながら板のオーバーボリュームを抑えこんでのセイリング。ビーチに帰りつくと、道具を砂浜に上げてNG ACP 255をとりに駐車場へ戻った。
 そして、NG ACP 255 + 4.7で再出艇した。
 ブローをつかんで加速。プレーニング。すでに両足はフットストラップに。腰胸ぐらいの波が崩れ、押し寄せてくるスープを勢いにまかせて越えた。思った以上にスープは厚く、越えたあとの白くなった海面に、一瞬、後方に引っぱられた。失速。セイルを開いて閉め直してマスト荷重。フットストラップには足をいれたままだった。やがて走り出す。
 次の波が目の前に。
 肩――おれの目からはオーバーヘッドに見えた。
 ちょうどトップから巻くように崩れてきていた。風上にも風下にも逃げる余裕はなかった。逃げたところで横波をくらうタイミングだった。道具が壊れないことを祈ってまっすぐ突っこんだ。
 凄まじい力に突き上げられた。一瞬でセイルとボードが手足から弾き飛ばされた。身体は波に巻かれ、もみくちゃに回転した。
 ぞっとしたのは道具が弾き飛ばされたときの感触だった。
 手からもぎとられてなかったら肩の関節が外れてしまってもおかしくないほどのパワーだった。道具は空中に高く跳ね上げられたにちがいなかった。


 回転が停止した。
 あわてて海面から顔をだし、道具を探してあたりを見回した。海海海。自分が一瞬、どっちを向いているのか、わからなかった。うねりで方向がわかった。身体が持ち上げられた拍子に風下方向にセイルが見えた。壊れてはいなそうだった。
 しかし、遠い。
 十メートルは風下だ。さらに流されていっている。離れていく。泳いで追いつけないかもしれない。それに風下の方には沖出しのカレントがあるはずだ。それに乗ってしまうとまずい。そう判断して陸の方を見た。突堤の頭しか見えなかった。恐怖感に呼吸できなかった。波にどつかれ、潮水を飲んだ。
 すぐに、息ができないのはハーネスで腹部を絞めつけているせいだ、ということに気づいた。ハーネスを緩め、泳ぎだした。今、自分がいるところが沖出しのカレントの上でないことを祈りつつ。
 うしろからやってくる波に何度も潮水を飲むはめになりながらも、陸地が近づてくるのが、わかった。波がきているのだから沖出しのカレントの上ではないはずだ。陸地がある程度、近づいたところで、引き波で沖へ少しもっていかれてパニックを起こしそうになった。それでも泳ぎつづけた。
 ビーチにたどりついた。
 海をふりかえった。
 道具はかなり風下に流されていた。
 海岸線を風下へ歩いて追う。
 菊川の河口まで行ってしまうとまちがいなく沖出しのカレントにつかまってしまう。沖へ行ってしまったらショップイワモトにたのんで捜索願いをだしてもらうしかないか……と思っているうちに、道具は河口の手前で漂着した。ラッキーだった。近くにいたセイラーが波打ち際から道具を上げてくれた。


 さすがにすぐに海へでる気力はなかった。
 恐怖感はまだ、残っていた。
 このまま、家に帰ったらもう二度とウィンドをやることはないかもしれないな、と考えてしまうほどの恐怖感だった。風の中、両腕を組んで大藪春彦の「汚れた英雄」を思い出した。主人公のバイクレーサーが事故のトラウマを克服するために、ひたすら練習する――まぁ、こっちはそんな大層なことではないのが。
 ハーネスをしめなおして海に入った。
 ビーチスタートしてゲッティングアウトした。波を越えて沖へ。ある程度、行ったところでジャイブ以外の手段で方向転換してビーチまで。うん。だいじょうぶそうだ。


 昼食で駐車場に戻ると、プロが何人か、来ていることに気づいた。
 何かイベントをやっているのかもしれない。


 午後一時をまわり、風がかなりガスティになってきた。
 風向きがかなりオフにふれている。そのせいだろう。ブローはきついが、抜けたときはすこんとなくなる。アウトは安定して吹いていそうだったが、インサイドでは波に乗っていないと、みんな止まっている。
 かすかに腰が痛いこともあって風の中、腕組みして様子を見ていた。
 腰が痛いのは二月に軽いぎっくり腰をやってしまったからだが、つらつらとリタイヤすることを考えていた。どういう風にしてウィンドをやめることになるのだろうか、と。身体が動かなくなれば、それはしかたないが、それ以外でいつか、やめることになるだろうが、それはどんなシチュエーションでだろう、と。


 板をビーチに置いておいたNG ACP 260にかえた。
 その浮力を利用してアウトにでる。やはりアウトは吹いていた。個人的にはかなりえぐい。アウトへ向かう方はなんとかなるのだが、ポートでインへ戻る方向は風を逃がしながらしかセイリングできない。楽しくない。インサイドでボトムターンしようとしてぼこぼこの海面に弾かれて激沈した。
 ちょうど波がきちんと崩れる場所だった。
 ウォータースタートしようとしていたら、後頭部をかすめて他のセイラーのボードが走っていった。スプレーを飛ばす、ボードの音がはっきりと聞こえた。風下にいったそのセイラーは頭を下げてあやまっていた。衝突したらもちろん向こうが悪いのだが、いい波を邪魔しているのはこっちなのでもうしわけない。
 ウォータースタートしてビーチに上がる。


 風向きがサイドにふれ、風が安定してきたのは二時半ぐらいだった。
 板をNG ACP 255に戻して二度ほど海に入った。
 いったん、空腹に、駐車場へ戻り、バナナを食って再度、海へ。風はきついほどだった。ビーチスタート。ゲッティングアウト――よし、波が崩れるところは越えた、と安心したところ、目の前に盛り上がったうねりが崩れはじめた。
 うそっ。
 越えた。
 次も崩れはじめていた。バナナを戻しそうになる。
 波のサイズが上がったのかもしれなかった。ちょっとした小山になった波を越えてさらに沖へ。
 しかもその先の風はどん吹きだった。
 降参。
 白旗上げてビーチへ戻った。



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Takehiro Yamada