雨よ、もっと降ってくれ




2004 年 7 月 10 日(土)
和田長浜
薄曇り
Sail:Expression 6.7(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 260



 洗濯をしながらぼんやりと考えた。
 今日のウィンドはオフにしようか。
 時間は昼近い。本栖湖へ行けば、二、三時間乗れる時間だ。けれどどうも気乗りがしない。理由はよくわからない。先週、あまり良くなかったのが、尾を引いているのか。
 うちの回りはぶんぶん吹いている。
 いつもアメダスの風向風速の情報をチェックしているサイトがメンテナンスのためか、最新の情報に更新されない。外を吹く風は内陸部だけなのか、海岸も吹いているのか、わかない。
 昼を過ぎた。
 情報が更新された。
 風速八メートルの矢印が湘南を指していた。向きは南南西だ。
 鎌倉は乗れる。
 ウィンドの道具をまとめて車に放りこんだ。
 携帯電話を忘れてしまったことに気づいたときには鎌倉方面へ向かって南下していた。


 なんとか二時少しすぎに鎌倉に到着したが、思ったより吹いていない。プレーニングしているのが何艇かいるが、どうもフォーミュラか、ライトウィンド・スラロームのように見える。
 逗子をチェックした。
 沖合いだけプレーニングしている。ブローがはいっている。
 それを見て長浜へ向かう決心がついた。逗子鎌倉には風が届いてないだけなのだろう。予想通り、葉山公園あたりでは風が入っているのが、見えた。吹いている。自分が正しいことを確信しつつ、南下。秋谷海岸あたりで祭の渋滞にはまり、和田長浜へ到着したのは三時をすぎていた。
 左の駐車場は五時までだが、右の駐車場へ移動すれば、いい。
 風は思ったほどではなかった。ぎりぎりというところか。ブローでなんとかという感じだ。三戸浜沖ではスラロームらしいセイルがかっ飛んでいるのが、見える。沖には風があるのだ。
 長浜では三、四艇が出艇していた。ビーチではフロムエーのサーファーセイルをセッティングしている人がいる。あまりの懐かしさにしげしげと見る。


 出艇していた人たちが戻ってくるのとすれちがって出艇。
 風が落ちてきているのかもしれない。
 ブローをつかんで二、三本、プレーニングしただけだった。沖合いの風を求めて強引に上りをとって小さな岬を越えた。そのあたりでがんがん走っている人がいたのだ。その人といれちがいで出た。
 走らなかった。風が落ちたのか、たんに腕なのかは、わからない。走らない。現実だけがあった。
 岬のあたりにはブイとロープがボーダーラインがつくられている。
 暗礁があるので、その注意というのもあるのかもしれない。
 出るときはそれをぎりぎりに越えてきたが、戻りは越えれそうもなかった。何度か往復をくりかえし、上りをとろうとする。タックに失敗して沈し、ウォーターに手間取ったため、むしろ下ってしまっている。
 雨がぽつりときた。
 それで顔が蒼くなる。
 今、吹いている風は前線に向かって吹いているものだからだ。
 前線が通過すると風向きは180度、かわるだろう。北系になる。やばい。しかたなかった。ブイとロープを突破することにした。プレーニングしていれば、キックジャンプで越えることができるかもしれないが、そこまでの風はぎりぎりない。
 うねりに沈んだ瞬間、通過してことなきを得た。
 四時半近かった。
 いったん出艇した場所に戻る。うねりと、下らせ気味でブローがきてくれたおかげだろう。プレーニングした。そのまま、ビーチに向かっていると、水面下の海底の岩がはっきりと見えた。


 このまま、上がってしまおうかとも思ったが、車を右の駐車場へ移動した。
 ブローが強まってきているように思えたのだ。
 再出艇。しかし、今度は最初のときよりも風がない。まったくプレーニングしない。そのうち風が左――南にふれた。サイドぎみになる。沖合いにでていたディンギーも次々に帰還してきている。
 終りか。
 そう思っておれも海水浴場のエリアのビーチに上がる。
 駐車場へ行き、水分を補給する。海ではサーファー艇が行ったりきたりしている。時々、ブローに沈している。その様子を見ているとどうも風が上がっているような気がした。
 また、出艇した。
 最初の一本はぎりぎりプレーニングした。ブローに一瞬、前に飛ばされそうになる。しかし、プレーニングして上りだそうとすると、浜が終る。おれには狭すぎた。もう少し風がないと楽しめない。
 また、上る。
 上ったときには風はアンダーになっていた。


 うろうろしながら風を待った。
 サーファー艇がセイルアップしているのが見えた。
 ブローが一瞬、きた。走り出す。プレーニング。両足のフットストラップがはいる。上らせようかと思ったが、前方にサーファー艇がいた。知り合いじゃないんだぞっ、とだれかがおれに忠告したが、時すでに遅し。おれはジャイブしていた。
 ところが、セイルの返しを失敗。沈。サーファー艇のセイラーと笑いあう。
「なんて天気なんだあっ」と彼がいう。
 日はさしているのに、雨が降りはじめていた。
 本当に終りになるかもしれない。
 ウォータースタートして岸に戻る。サーファー艇も無事に戻ってきていた。
 が、その間、風が吹きだしていた。
 セイルを駐車場へ移動してしまっていたが、三戸浜沖に出艇したウィンドサーファーがかっ飛んでいる。さっきまでは姿もなくなっていたのだが。
 吹いているのだ。
 おそらく三十分も保たないだろう。
 が、今は吹いている。白波が少し見える。
 セイルを担いで波打ち際へ戻る。
 出艇した。
 雨が上がっていた。
 風はなくなっていた。
 また、上っていくが、だめだ。ブローがはいっているのはごく一部だった。それも一瞬だ。しつこく海の上にいたが、一度もプレーニングしなかった。つくづく思うのはさっき雨が降っていたとき、あのまま、乗っていれば、よかったのだ。そうすれば、一度は確実にプレーニングしていただろう。


 あきらめ、最後のセイラーになり、道具を駐車場へ運ぶ。
 水分を補給する。
 ふたたび、今度はかなり激しく雨が降りはじめた。セイルにあたる雨滴が小太鼓の連打のような音をたてる。
 おれは空をふりあおいだ。


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Takehiro Yamada