
負け犬〜ルーザー〜
2004 年 1 月 22 日(木)
和田長浜->逗子海岸
晴れ
Sail:CORE 4.1(NEIL PRYDE) -> ZONE 4.7(NEIL PRYDE) Board: ACP 255
夜中に目が醒めた。
寝返りを打って寒くないことに気づいた。エアコンをつけっぱなしにして寝てしまっていたか。けれどエアコンの作動音は聞こえない。布団から出るのが苦にならない寒さだった。そのまま、起きた。時折、他の部屋から物をひっくり返したような音がする。こんな時間に起きている御近所さんがいるとは――。
うるせえよ。
メールをチェックしていてふと気づく。
もしかしたら風が吹いているんじゃないのか?
玄関から外を見た。暗闇の中、桜の木が大きく揺れていた。あの音は御近所さんではなかったらしい。アメダスによると、和田長浜あたりに南西11メートルの風がはいっていた。鎌倉逗子は6メートルぐらいか。
南西ベースの風ならあまり寒くないだろう。
天気図も日本海側に低気圧がある。太平洋側にもある――波がはいるといやかもしれない。今日は御前崎コンディションだと思っていたので南西は意外だった。日が上りはじめる六時ぐらいに出発することにした。鎌倉かな。
車をだして裏道を抜けて国道246号へ向かう。
ほとんど無意識に運転していた。途中、愕然となる――自分が今走っているルートは御前崎へ行くとき、使っているやつだ。湘南方面へは逆方向だ。
ぼけている。
いったん江の島にでることにする。
というのも、風向きが南西ベースというよりも西風らしかったからだ。それなら未踏の茅ヶ崎をチェックしてみるのも悪くない――ラジオで今日の天気のことをいっている。冬型気圧配置……今年一番の寒気……?
は?
寒いってことかい。
それでいっぺんに気持ちが萎えた。だまされた。
江の島。風はまだ、はいってきてなかった。交差点で海を見ていた人がいきなり手をふってきた――えっ。
通りすぎて気づいた。I附さんだ……。さすがに交差点なので車は停められなかった。が――それにしても。驚いた。
辻堂をこえ、茅ヶ崎へ。途中、かなり風景が変わってしまっていて感慨を覚えつつ。風は沖合いを抜けていっているような感じで全然、はいってきていなかった。
たぶん、ここだろう、という茅ヶ崎の場所を見つける。
駐車場のロケーション自体はそれほどよくない――海岸にでるために、道路をわたらなければ、いけないけれど、横断歩道が目の前にあるわけじゃない。駐車場はまだ空いていなかった――そこでもうひとつの懸念のインターネット接続可能か、というのを確認してみる。Windowsが固まった……。
しかたないので東進。ふたたび江の島を抜け、鎌倉。思ったよりも交通量がある。風ははいってきていない。煙突から上る煙もまっすぐだ。これは長浜しかないかな。逗子。あれ? 吹いてる。
大崎をこえたとたん、風がはいっていた。
鎌倉と逗子ではそんなに風のはいりはちがわないと思っていたのだけれど。てのひらをかえしたようなこのちがいは何だ――西だからだろうか。逗子海岸に下りてみる。風ははいっているが、それほど強くなかった。5の後半、ボリュームのある板というところか。西なのでほぼオン。駐車場のそばでインターネット接続してみる。つながった。アメダスの風向チェック。鎌倉に風がはいってなかったのは、タイミングなのか、ほんとうに地形的なちがいなのかと確認するために、いったん鎌倉に戻る。タイミングではなかった。
ふーん。西のときは鎌倉よりも逗子の方が風ははいる、と。
和田長浜へ向かう。
アメダスでもあきらかだった。長浜には風ははいっている。葉山あたりからすでに風はとどいていた。問題は波だった。自分の能力以上の大きさだったらという不安はある。逗子鎌倉にもそれなりの波ははいっていた。そのサイズから類推して――たぶん1.5倍と考えてぎりぎりこなせるサイズかな、と。
無料駐車場であるし。車が潮まみれになってしまうけれど。
長浜ではウィンドの準備をしている人がいた。これはポイントが高い。風は強い。4.1m2確定。右からのクロスオン。波は時折、胸肩。迷う。目の前の決断から逃避するためにインターネット接続。おや、接続できた。
4.1 + NG ACP 255 をセット。
一瞬、顔が青くなったのはウェストハーネスのベルクロが腹に巻けなかったためだ。
浜の右端から出艇。10時をすこしまわっていた。もうひとりの人はかなり乗れる人だった。なので自分の安全度に関しては参考にならないが、見た感じ、途中、風が足りない個所――左奥近くの、暗礁地帯の沖あたり――があるようだ。嫌だな。
行って帰ってきた。ブローはかなりきつく、風を逃しながら乗るしかないオーバーセイルだ。岸にあがる。さすがに一ヶ月ぶりのウィンド。右腕が一発で腕パンになってしまった。快感よりも恐怖心の方が強い。上体の筋力が落ちているのでうまく乗れていない。
何度目かに、ポートで戻ってくるラインで頭の上に崩れる波を感じながら――サイズはたぶん肩か、胸――その波から逃げるようにすっ飛ぶ。思わず、奇声を上げていた。
ついに三回目か、四回目に風がアンダーで左奥にはまる。しかもそのあたりで波が崩れるのだ。やばい、と思ったときには巻かれていた。チューブが巻くような波ではないので、海中に押しつけられなかったが、スープにもまれる。身体が突き上げられ、ブームの上に落ちた。アバラを強く打つ。ありあまる脂肪層がクッションになってアバラ骨は無事だった。
すばやく立ち泳ぎしたが、暗礁で足を打った。浅い。次の波にまた巻かれた。なんとかウォーター。アンダーセイル。沈。波。くそっ。ウォーター。風、風っ。きた。プレーニングして海岸の右端まで逃げかえる。最後の最後で思わず、バックサイドに波に当てこんでまた、波に巻かれた。
岸に上がったぼくはほとんど尻尾を巻いた負け犬状態だった。
NG ACP 255を見るとボトムに海草がへばりついている。手をのばした。が、とれない。よくよく見た。傷だった。三本ほどあざやかに引っかき傷ができている。さすがに ACP は頑丈だった。表面の塗装の部分だけだ。沈していたとき、実は気づかなかったが、暗礁を掠めていたのかもしれない。
それもあって気持ちが萎えた。
つくづく菊川の方が楽だ。
もうひとりのセイラーが上がろうとしていた。江の島に行って乗る、という。たしかに、風はさらに上がりそうな雰囲気になってきていた。大西。そろそろ江の島あたりにも西風がはいってきているころだろう。
あかん。
ルーザース。帰ろう。結局、一時間も海に出てなかった。
砂が飛ぶ強風の中、道具を片付け、三浦の実連事務所に寄ろうと考えて車を出した。車を走らせているうちに、逗子に行ってみようか、と思いつく。分岐で逗子への方向を選んで北上した。三十分ほどの道のりだった。
逗子海岸にでて風が長浜より冷たいと文句をいいながらセイルサイズを考える。
風はほとんどオンショア。ほんのすこしだけ左にふれているような感じだった。
出艇しているセイラーは見るからに 4 のセイルを使っていたけれど、うーん、4.7 を選択。何本か、乗る。なんか、つまらん。オンショアなので、どうしてもサーファーのいるあたりに突っこんでしまいそうになる。その手前で方向転換してしまうので、つまらんということもある。
昼飯を食ったら胸やけがして吐きそうになる。
海に戻ると、風が上がってきていた。
4.7 ではきつそうだ。
はふー。
道具を片付けるも、細い砂だらけになってしまった。
これが2004年一発目のウィンドかい。けっ。
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Takehiro Yamada