
エッヂ
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2003 年 12 月 21 日(日)
御前崎菊川河口
晴れ
Sail:CORE 5.3(NEIL PRYDE)->ZONE 4.7(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 255
昨日とはうってかわって小波だ。
菊川にきているセイラーのセイルは昨日にくらべて大き目―― 4.5 あたりか。風はサイドショアでインサイドは昨日に比べたらはるかに安定して吹いている。ガスティはガスティだが。許容できるレベルだ。そういえば、昨日は空に少し雲がでていたが、今日は完全な快晴だ――関係があるのだろうか? ひどくガスティなときには雲がでているような気がするのだが。錯覚か?
とにかく身体の四分の一が脂肪という現実には勝てず、セイルは 5.3 を選択した。
なにもかも準備が整い、海にでたのが、11 時。
いつからか、つくられた防砂用の柵で排水口の風上が全体的に出艇ポイントになっている。だいたいその正面が主なセイリングエリアで、セイリング人数が集中している。もちろん波もいいのだろう。ウィンドキャンプを昨日今日とやっていてそのせいもあるかもしれない。
アウトにでてビーチに戻ってきてを何度かくりかえす。
その間、ハーネスラインの位置、ブームの高さの調整。セイルのダウンに引き直し。外れたフットストラップのつけ直し――といろいろとセッティングをいじる。
フットストラップのつけ直しは推奨ポジションのデルリンが馬鹿になってしまったからだ。それよりも指二本分ほどうしろにデルリンが打ってある。それを使用しようというのだ。推奨ポジションでなんの不満もなかったので、だいぶん、乗り味がかわってしまうだろう、とそれが心配だった。最悪、うまく乗れなくなるかもしれない。
いつも午後、二時間ほど風が落ちるので、今日も落ちるだろう、と踏んでいた。
5.3 でOKの風がくる、と。
それがなかなかやってこない。
なんか、逆に吹いてきているような気がする。
アウトではオーバーセイルで、完全にビビリがはいってしまうほどだった。セイルを開いてしまっているので、板は走らないし、思ったほど上らないし、と苦しむ。全然、楽しくない。実は気持ちひとつでちゃんとセイルを引きこめば、よいのだ。よいのだ、ということはわかっているだが、ビビりがはいって引きこむことができない。
すねぐらいの波でジャンプしたとき――小さな波だからとハーネスをかけたまま――、オーバーセイルで風下方向へふられ、まっさかさまにノーズダイブしてしまった。それがきっかけでようやくセイルを換える決心がついた。
4.7 にセイルチェンジ。
セイルをかついで海へ向かう。途中、すれちがうセイラーの話を聞くともなしに聞こえてくる。吹いてきたよー。ふむふむ。落ちたねー。どっちやねん!
NG ACP 255 に 4.7 をセットして腕組みしてへたりこみそうになる。
どん吹いていた。
4.1 の風だ……。
セイルを交換するか、とも思ったが、いやいやいや、と心の中でかぶりをふった。昨日のオーバーブローの瞬間よりは吹いてない。昨日は 4.7 で乗った。それなら今、4.7 で乗れないことがあろうか。いや、乗れる。そのはずだ。
出艇した。
フットストラップがうしろなのが、気になる。
アウトへ。オーバー。が、乗れる。なんとかなる。インへ戻ってきた。波なんかわかりゃしない。とにかくフロント方向へカーヴィング……そのまま、暴走……。
ビーチで一休みして再出艇。
小波でジャンプした瞬間だった。
空中でセイルが両手からオーバーブローでもぎとられた。
リグが風下へすっ飛び、ボードももっていかれた。ぼくは背中から着水。
オーバーセイルだからセイルサイズを小さくしたのに――。
ブームを高くしてダウンの引きを強くして――とセッティングを調整して(もっともこれはオーバーに対応するために調整したのではなく、調子が悪かったから)出艇すると、今度は風が落ちていた。
腹も空いたので、栄養補給に駐車場へ戻る。2時ぐらいだった。
バナナを手に、半畳ほどの木洩れ日になっている場所に腰を下ろす。なんとなく諸星大二郎の「遠い国から」というマンガを思い出す。うおああああ、と泣かなければ、だめか?
ちなみにバナナで、いつも思い出すのが、テニスの松岡プロの現役のときのことだ。
たまたまテレビで中継されていたテニスの試合(ウィンブルドンだったような気がする)で、松岡プロが戦っていたのだが、インターバルのたびに、松岡プロがバナナを喰っていた。
「まだまだ、いけるよおっ、松岡っ」という応援の声も聞こえる。こちらもインターバルのたびにだ。わざわざ日本から応援にいっているんだな、と感心しながらも、うるさい親父だな、とも思っていた。
「こっからだよっ、松岡っ」
同じ声の応援が静かな会場に響いている。
そこでようやく気づいた。
その応援の声は松岡プロ自身の声だということに。
海に戻った。
途中、上がってくるセイラーと何人か、すれちがう。風がなくなってしまっていた。ボードとセイルを担ぎ、戻ってくるセイラーの顔を見て驚いた。浅野プロだった。バーレーの試乗会でもないのに、菊川で見かけるとは。
寒さにふるえながらビーチまで行く。風はない。ちょうどI附さんがゲッティングアウトしていくところだった。板の浮力にまかせて強引に出ていっているのがわかる。微風でも身体をさらしていると、寒いので柵の陰に身を隠しながら風待ち。
目の前で雑談している三人のうち、一人は外国人だった。本栖湖でよく見かける彼だ。どこの国の人かは知らないが、その陽気な態度からアメリカ出身だと決めつける。はじめて本栖湖で見たとき、イムコでキックジャンプをしていた。その彼が出艇した。風が上がってきたのだ。体重的に近いので、彼を指針とさせてもらう。セイルはノースのウェイブセイルだったのに、なぜか、イムコセイルに見えた。
ビーチスタートに少しもたついたけれども、ブローをつかんでプレーニング。波で高い迫力のあるジャンプをしてアウトへ消えていった。
というわけでぼくも再出艇した。
やはりフットストラップの位置の関係だろう。フィンが抜けるとリカバリーするのに手間どる。リカバリーできずにそのまま、沈してしまうこともしばしばだった。ハーネスをフックしてからフットストラップにいれるという手抜きのやり方もしづらい。
なんかフットストラップの位置をかえてから一度もジャイブしようとしてなかった。その前に沈してしまうのである。
とまれ。とにかくぼくは沖で方向転換してインサイドへと向かった。排水口あたりにたどりつきそうだ。ちらりと風下を見てだれもいないことを確認する。きょろきょろしながらインサイドへ。風上に波があるが、うまくあわせられない。風下の様子はよくわからない。ちょいと下らせぎみにして前のうねりを追いこす。風上側に波――膝すねぐらい。バックサイドに板をふって崩れてくるところに当てこむ。身体を前方に放りだすようにして板を返す。波をすべりおりる。そこへひとつ前の波をこえて沈しているセイラーが現れた。海面に首だけだしているセイラーの怯えた顔と一瞬、目が合う。フロント方向へカーヴィングしてそのセイラーを避けてボトムターンもどきで波へ。トップターン。しまった。きちんと板に体重をのせてなかった。波に置いていかれそうになる。パンピングして波に乗りなおしてバックサイド。そして、もう一度、フロントへ。そのときにはもう波はたんなる海面の盛り上がりにしかすぎなかった。
それでも動きまわりすぎた。
すっかり息が上がってしまった。ジャイブしてアウトへふたたび、でていく気力は残ってなかった。レストハウス前のビーチへ上がる。
あー、疲れた。おもしろかったけど。
風はふたたび落ちる――考えてみると、5.3 で出ていたときぐらいの風になっていたのだけれど、なんとか、4.7 で乗れていた。うーん。
結局、あがったり落ちたりする風の中、何本か、乗ってから今日のセイリングは終了にした。まだまだ、けっこうな人数が海に出ていたけれど、四時近いということもあって急速に冷えてきていた。
帰りがけに上がってきたばかりのI附さんに聞いたところ、河口あたりの波がよくなったのだという。
しみじみとI附さんがいった。
「やめられまへんなぁ」
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Takehiro Yamada