
不条理日記
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2003 年 6 月 14 日(土)
本栖湖FANビーチ
晴れのち雨
Sail:Expression 6.7(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 260
爆睡ののち、目を醒した。
Tと連絡して今日、行く場所を検討する――アメダス七時の風の状況を見るかぎりだと、吹いているのは御前崎。昨日、日本海にあった低気圧が太平洋側に抜けかけている。緩い西高東低になっているようだ。しかもアメダスの日照状況を見ると、晴れている。
イワモトの西風予想は店舗移転中のため、更新されていない。
昨日一日吹いた南西風の影響で波のサイズがあがっているだろう。
乗れるだろうか?
Tは時間的に御前崎は乗り気ではないようだ。
次の候補は本栖湖しかない。
全国的に雲がかかっているが、前線があるわけではない。本栖湖は午後から晴れる可能性が高い。晴れれば、吹くだろう。翌日の予想天気図を見ると、太平洋岸に梅雨前線があるような状況――これはつまり、前線が日本列島に向かって北上してくるということだろう。もしかしたら午後から御前崎など、太平洋岸は前線の影響を受けて雨が降り出すかもしれない。
ひと風呂あびて八時のアメダスをチェックした。
山梨県あたりに晴れ間がのぞいていた。
こりゃ、本栖湖はまず吹くな――行き先を本栖湖に確定してTに連絡をとろうとしたら向こうから電話がはいってきた。
すでに本栖湖へ向かっているという。
道志街道の九十九折りはよく晴れていた。
雨が空気中の濁りを流し落としたせいか、透明感の深い青空――山中湖の湖畔を抜け、一路、本栖湖へ向かう。夏の陽射しだ。
本栖湖にきているセイラーは思った以上に少なかった。正午だというのに、FANビーチ前に路駐できた。先に到着していたTのうしろに車を停める。
セイルをひっぱりだしてチェックしているTのかたわらに簡易チェアをだした。
コンビニで買ってきた冷やしうどんの封を切る。
「そうそう、うっちの秘密って何?」
「つっしの秘密でしょ?」
「F島さんの日記にうっちの秘密とあったけど」
「それは読んでないけど、つっしの秘密だと思うよ」
つっしとはTのことだ。
「それって何?」
「いえないから秘密なんじゃん」
「うーん」
冷やしうどんの麺をほぐしながら考えた。
「ついに離婚したか」
「ぶわはははっ!」
大笑いされた。
I田さんが本栖湖へ来ているか、と思い、連絡してみるが、車がなくて行けない、という。どうやら知人関係の中で今日、本栖湖へ来ているのは、Tとぼくだけらしい。
風はブローがはいったり、とまったりでなかなか、吹き上がってこなかった。
晴れていた空も薄曇になってしまう――あやしくなってきた。
ま、二時には吹くでしょ。
そう楽観して道具を車からひっぱりだす。
6.7 を張る。
張り終えた頃、湖面のウィンドサーフィンが安定してプレーニングしはじめた。
日焼け止めオイルをぬろうとして掌の潰れたマメにすりこんでしまう。絶句した。
一時半。出艇。
最初の一往復はノンプレーニング――その間、ずっと、へんだ、なんか、変だ、とつぶやいていた。風は充分なのに、プレーニングしない。アウトを引きすぎている。すぐに、1cm ほど、アウトをゆるめた。風はさらに上がる――そのため、プレーニングできたが、セッティングをかえたおかげなのか、どうか、不明。
しかし、うまく走り出せない。全然、しっくりきてない―― 6.2 で乗ったときの方がはるかによかった。セイルとボードのマッチングというのもあるのだろうが、セッティングが詰られていないからだろう。
ストレス三割増しでセイリング。ジャイブもぼろぼろだ。セイルもボードも買わなければ、よかったと後悔してしまうほど。
風は 6.7 でオーバーになる。
悲鳴がでる。
が、それも二時半まで。
雨がふりはじめて風はかなり不安定になってしまった。
乗れることは乗れる。
けれど、幅の狭いブローとふれる風で、あまり楽しめない。さすがにスラローム系の道具を使っているセイラー――Tも含めて――は三割増しでプレーニングしている。
そういう状況もあって何度もセイルアップするはめに陥った。まずボードの上にのぼるのが一苦労だった。NG 260 は丸太のようでころころしてしまうのだ。ハーネスのフックでボードを傷つけないように、とするからなおさらだ。ふと見ると、デッキにびっしりと体毛がこびりついていた。
それは膝下のすね毛なのだった。
四時半ぐらいに雨がひとしきり激しくなってきたので、あがりにするつもりで道具を車に運んだ。片づけようとしていたら湖面の方からフルプレーニングしているウィンドの音が聞こえてきた。
あれ?
あわてて湖を見ると、かなり安定してブローがはいってきていた。
「しかたねーなー」
そうつぶやいて道具をまた、湖に運ぶ――出艇。うしろからTにぶち抜かれてしまった。ブローはかなりきつめ。なのに、なぜだ?
プレーニングしない。
結局、三十分ほど吹いたその強風コンディションで、ぼくは一瞬か、二瞬しか、プレーニングできなかった。なんで、なんで――泣きながら地面を叩く吾妻ひでおが脳裏に浮かんだ。
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Takehiro Yamada