
裏切りの日日
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2003 年 3 月 9 日(日)
三浦菊名海岸
晴れ
Sail:CORE 5.3(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)
金曜の夜に、土日は御前崎菊川あたりにいます、といっていたにもかかわらず、日曜はどういうわけか、三浦にいた――土曜も唇が渇く間もないうちに事情があって御前崎行きはキャンセルになってしまっていた。ぼくの動向に左右されるような人はまず、いまいが、それにしても忸怩たるものがある。やはり寸前になるまで行き先を確定しないぼくが予定を述べること自体がおこがましい行為だったか。
朝、八時すぎにコンビニへ行きがてら海をチェックした。
吹いているのは吹いているが、スラロームならという感じ――ラージ・ウェイブで出れるというコンディションではなさそうだった。フォーミュラに小さめのセットかな、と思いつつ、菓子パン二個を朝ごはんにして海岸線の駐車場へ。今日は泊りこみ組としてI田さん、Sさんがいる。携帯メールに着信があり、F島さんがこちらへ向かってきているという情報は入ってきている。N沼さんは御前崎菊川だ。
Tは不明。
風があがってきている。
なんとかラージ・ウェイブがだせそうだ。6.2 をひろげてセッティングにかかったところで通りすがりのウィンドサーファーがセイル、いくつですがか、と聞く。6.2 と答えると、まじですか、という。
改めて海を見た。
――えっ?
海面が真っ白だ……。
迷いに迷い、迷った末、5.3 を張ることにした。
そこへF島さんがやってきた。笑いながら 6.3 でしょう、といわれたが、首肯する気にはなれなかった。断固と 5.3 を準備して出艇――どオーバー。しかも風向きがオフ気味だ。ダウンとアウトをもう一度、引き直したいとは思ったが、出艇した場所に戻れない。いつもの風向きではないので、感覚がちがうのだ。しかたないので、いったん、風下に流されたところで沖ノ島の風下を抜けて沖合いへでて――ブローは完全にオーバーで板は暴れまくった――なんとか、出艇した菊名海岸へ引き返してきた。
I田さんにオーバーですぅ、と訴えてセイルのセッティングをかえてふたたび、海へ。
今度は風が足りなかった。しまった、I田さんに嘘をついちゃった、と思ったが、もう遅い。沖合いへでてセイリング。ジャストオーバーぐらいの風だった。少し風上にいるF島さんのところまで上っていく。うまくF島さんを見つけられない。そのまま、上る。気まぐれを起して津久井浜まで一時間かけて上った。
風さえあれば、ウェイブボードでも上ってこれるもんだ、と思いつつ。
津久井浜の沖合いは吹いている――かなりガスティだ。オフぎみのせいもあるかもしれない。風上のエリアではMRCが練習会をやっているのが見える。今日はダウンウィンドスラロームの練習らしい。Sさん、いるかな、と思ったが、そこまで上っていく元気はなく――そろそろ、昼飯時なので帰ってくるだろう、と考えて津久井浜へ上陸する。腹がへってきたのでSさんを見つけてお金を借りよう。
駐車場を風上からさがしていってSさんのハイエースを発見した。
その前で休む――眩暈でくらくらする。ラッキーなことにすぐにSさんが戻ってきた。セイルをセッティングしているI村さんに話しかけているSさんに声をかけて、お金を借りて昼飯。助かった。天気はいいのだが、北系の風のため、かなり寒い。
Sさんがセッティングを直すのを横で見て急にスラロームに乗ってみたくなってSさんの道具を借りて一往復。たしか道具は STAR のスラロームに、6.2 の RS-1 だったと思うが、驚く。楽で速くて軽い。以前、Sさんから借りて驚いたバーレーのスラロームよりもさらにスピードがのびる感じだ。チョップをなめるように走るような感じで海面のギャップを感じさせない。バーレーのときはぼくの乗り方がしっくりこなかったが、今回はちがう。きっちりとはまっているのがわかる。
――これが道具の進歩かぁ。
嘆息しつつ、ここまで乗ってきたウェイブボードの大変だったことよ。
やはり三浦のような海面はスラロームの方が楽しめるのかもしれない。くそおっ。
Sさんに道具をかえして風上に置いた自分の道具に乗って戻ってきたときにはSさんはいなくなっていた。出艇したのだろう。海を見回すと、I村さんがかっ飛んでいた。ばかっ速い。軽量級なのに大きく身体をつかっていて一回り大きく感じるほどだ。
ジャイブは去年の本栖湖で見たよりも引きこみを強くしている――ターンの前半のスピードがすごくシャープだ。前も速かったが、それよりもさらに速い。ぼくが目撃したときはたまたまジャイブを失敗していたけれど、あれはターンの後半でターンの出口方向に視線をやってないからじゃないかな……。
そういえば、今日、ぼくはジャイブは全滅だったけど、ターンの後半でボードのノーズを見てしまっていた。風が強いので視線を出口へまったく向けれなかった。反省である。
再出艇。
風向きはいつもの三浦に戻ってきていた。岸寄りのガスティなエリアをとろとろと抜けて鉄柱のそばを通る。その向こうに沈している人が女性がひとり。風上を抜けようと思って、なんかへんだな、ということに気づいた。セイルとボードの重なり具合が非常識だ。ジョイントが外れている。声をかけると、ジョイントベースがこわれたのだという。
曳航しようにもウェイブではかなりむずかしい――曳航シートももってきていなかった。
いずれ風下かなりはなれたところだけど、流れつくから、と安心させるつもりでいって、いっしょにきているという旦那をさがしにぼくはいったん浜へ。駐車場の不二家前までいってさがすが海にでているらしく見当たらない。海を見学しているらしい、そばの人に言伝して――奥さんが流されている、と――ぼくは自分の道具のもとへ戻りながら考えた。とにかく曳航できないかな、と。
海上に姿がわからなくなってしまっていたこともあって心配になってきた。
ちょうどI村さんが駐車場に戻ってきていたので、たのんで曳航用シート――キャリアベルトを借りて海へ。菊名海岸へ戻りながらさがしてみることにした。
さがしている途中で、風がオフがかっているので不安になってきた。道具を捨てて泳ぎだしていないか、と。いた。
一応、駐車場にいる人にたのんできたと伝えてからぼくの道具とつないで曳航を試みてみる。さすがにプレーニングするわけはなく、プレーニングしない状態のウェイブボードはハーネスもつかえず不安定で、すこし進んでは沈をくりかえす。それでも一時間ぐらいで岸までたどりつけるかなぁ、と考えているところで Tears のレスキューボードがきてくれた。I村さんが連絡してくれたんだ、と思ってキャリアベルトを流されていた女性に、I村さんにわたしてくれるように――レスキューしてくれているK村さんにたのめばわかるから、と――託してぼくは一路、菊名海岸へへろへろと戻っていった。
菊名海岸が見えてきた。
海岸線ぞいに消防車――はしご車が半鐘鳴らしサイレン響かせて走っていく。火事か、と思うが、見渡すかぎりその気配はない。パトカーも見える。どうも菊名海岸あたりに集まっているようだ。
――他にもだれか、流されたんだ……。
菊名海岸にたどりついて上陸。パトカー、はしご車、制服警官、消防隊員が見える。その中にI田さんの姿が見えた。
「あっ」
流されて世間を騒がせているのはぼくなのだった……。
警官に住所氏名生年月日を聞かれ、状況説明をし――I田さんは海上保安庁に連絡して船をだすのをやめてもらい、こちらにも事情を話し、ひらにあやまる。しかもS田さん、I田さんが風下の方をずっとさがしてくれていたと聞いてまた、ひょえぇっ、となってしまった……。もしかしたらK地さんの奥さんにも心配をかけたかも――。
もうしわけない。
三時間も戻ってこなかったら事故ったと思うわな、ふつう。
しかも気まぐれで急に津久井浜行きをきめた上、ウェイブボードで行くとは普通、思わないよな……Sさんと会ったときに携帯借りて連絡しておこうかと思ったのだが。後悔してもはじまらない。
つくづく、もうしわけない……。
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Takehiro Yamada