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2003 年 2 月 23 日(日)
三浦菊名海岸
曇り
RX1 9.3(NEIL PRYDE) Board:FALCON 100
憂鬱だ。
中古とはいえ、買ったばかりの板の進水式だというのに。
買い主に継子あつかいされていることを察知しての意思表示なのか、ボードのスケグのピンの長さが足りなかった。スケグがとりつけられない。
「――N井さ〜ん」とぼくは売却者の名前をつぶやいて嘆いた。
FALCON 90 は売れてしまっているので、それのスケグのピンはない――さいわい、今日はT、F島さん、N沼さんがきている。Sさんは津久井浜の方でMRCの練習会だ。Tにでも予備を借りるか……と思いつつ、自分の道具箱を一応、ひっくりかえしてみた。
あった。一本だけ長めのピンが箱の中に転がっていた。
スケグとフットストラップをとりつけてからセイルをセッティングした。11 をためしてみようか、という気持ちもなくはなかったが、さすがにはじめての板にはじめてのセイルでは荷が重すぎる。セイルは去年、メインにつかっていた 9.3 を張る。風もそのくらいの感じだった――Tは 7.2 にスラローム。F島さんはフリースタイルに 6.7 という組み合わせだ。
N沼さんだけがフォーミュラのメーターボードに 10.4 。だってこれしかないんだもーん、と笑っている。
風は北東ベースの東ふれ。沖ノ島をこえるまではプレーニングしないようにしてのんびりとセイリング。暗礁が所々にあり、70cm のスケグではいつ、ヒットするか、わかったもんじゃない。藻が密集している地帯を抜け、沖ノ島をこえた。
ひさかたぶりのウィンドに筋力は二十%減、というところか。
プレーニング。走り出す。ストラップのサイズは問題なし。走りは FALCON 90 にくらべると楽だ。テイルの切れこみの効果だろうな。90 はテイルのオーバーフローを抑えきれなくていつも苦しんでいた記憶がある――それでもさすがに、チョップにはねられて空中にとびだすと、風の影響を 100 の方がうけるらしく、一気にめくられるように風下にノーズが向いてしまった。ちょっとしたフォワードループもどきの状態になって激沈。
津久井浜、菊名海岸の中間ぐらいまで上って下りをためしてみる。上りはできるけれども下れなくなってしまうということはよくある話――ノーハーネスでなんとか、下らせることはできたが、かなりビビっている。以前、FALCON 90 を壊してしまったときの印象が強く残っているのだ。チョップを越える瞬間、時折、板がめくれてしまいそうになる。
恐い。
スケグの揚力をおさえきれず、すぐに板がのぼりはじめる――だめだ、こりゃ。疲れきってしまった。
二本目の上りもうまくない。しっくりこない。ふと思いついて肩を外にだしてハイクアウトした。スラロームでのぼくのセイリングフォームだ。瞬間、加速した。板から体重が抜けたからだが、セイリングも安定するのがわかった。あっ、と思う。もしかしたらずっと勘違いしてたんじゃないのか?
フォーミュラの乗り方はコースレースの乗り方に似ていると聞いていた――それが予断になっていたんじゃないか?
考えてみれば、コースレースの経験のない人間がコースレースの乗り方をしようというのが無理な話ではないか。スタボーも同じように肩をだすようにして乗る。走る。スピードがのっているのがわかる。これか。これか、と思っていると、かつてM下さんにいわれたストラップにいれた足のつま先が両足ともそる、という状態にも瞬間的だけだが、なる。
おおっ、なるほど。
しかし、上り角度はあんまりとれてないような気がする……。
セイルを海面におとして休み休み乗ったが、一時間ぐらいでへろへろになってしまった。
いったん、菊名海岸へ戻る。N沼さんが帰る準備をしているところだった。
ひさしぶりだとだめだねぇ、とN沼さんすらぼやいていたが、ぼくも疲れてしまっていた。N沼さんは乗りこめば、身体がなれるんだが、と残念そうだ。ぼく個人としては筋トレしながらセイリングしているようで、フォーミュラはなぁ。やはりウェイブ系の道具の方がはるかに楽でいい。
板をチェックしてみると、クラックを発見。応急処置でリペアする。硬化するまで時間がかかるので昼飯にした――冷いお茶を飲んだら下ってしまった。下痢だ。
N沼さんにつづいて帰り仕度をはじめたF島さんに笑われながらジタバタ。詳細は内緒だ。
ようやくひと息ついた。
ふと思いついてスケグを 62cm に交換する――蒲郡の全日本スラロームのときに、ラディス選手が日本人には 70cm のスケグは大きすぎるといっていたからだ。ずっとためしてみたいと思っていたのだ。いい機会じゃないか。
70cm のスケグを使ったのは今日がはじめてだけど。
沖ノ島の横を抜けて沖合いの海面へ。
ボードの底面積の抵抗に負けて走りだしはうまくないが、プレーニングすると、62cm の方が本当に 70cm よりも楽だ。スピードもでているような気がする。不思議なことにチョップに弾かれて空中に飛びだす回数が激減した。これは馴れなのか、それとも風が少し落ちたのが原因かもしれない。上って下る。下りは 70cm よりもはるかに楽になったのがわかる。
Tがよく FALCON 90 の方が下りは楽だ、いうが、その一因はスケグのサイズではないか――そんな気がした。
体力が尽きかけているので、休み休みセイリング。
そういえば、Tが陸にあがってきているのを一度も見かけていない――あいつは化物か?
ぼくの方はもう一度、菊名海岸に戻って中休止。
あがろうかな、と思ったが、最後にもう一度、出艇した。
かつて 62cm のスケグをつけて FALCON 90 に乗っていたときはスピンアウトしまくって苦しんでいた。それが FALCON 100 だと一回もスピンアウトしていない。不思議だ。セイリングフォームをかえた影響もあるのかもしれないが。
津久井浜の沖まで上ってゆき、鉄柱のそばに群生している藻に突っこんで沈。ひょえーっ、といいながらゆっくりと前に倒れる。今日、三度目だ。なさけない。学習能力がなさすぎ。
今回はじめてその鉄柱よりも風上側の海面まで上る。
さらに上ではMRCが練習をしている。Sさん、いるかな――と上っていってみた。途中、タックしてのたー、としていたらT社のM口さんに抜かれた。ついていってみようとして、練習会に参加するためだ、と気づき、邪魔しちゃ悪いのでちょいと下のラインで走る。沖合いへ――時々、セイルのトップを見上げてリーチを、フットラインを見てどの程度、アフターレイキしているものか、セイルがどこまで引きこまれているかをチェック。ふーん、引きこみすぎかしらん――と思っていたら後方のフォーミュラがぼくと同じラインを走っていることに気づいた。抜いてやるぅオーラを感じた。必死になって逃げる。沖合いで風が抜けたところで失速してしまったのでタックのふりをして胡麻化す。
そのまま、停止して後方のフォーミュラが追いついてくるのを待った。
だれだろう、と思ったのだ。Sさんでないことはたしかだった。
あれ?
意外。逗子をホームゲレンデしているT社のN島さんだった。板、買ったんだぁ、といわれる。すこし話して、上りましょう、とN島さんがスタート。ぼくはかなりもたついてスタートした。背中側にいたのでN島さんがどのくらいの角度で上っているのかはわからなかった。一応、ぼくとしては目一杯の上り角度で突っ走る。しばらく走ってからふりかえるようにして風上を見たら 10m 以上、上下にはなれていた。がーん。これははなれすぎだろう。しかもN島さんの板はぼくと同じ FALCON 100 だ。ショック倍増。
げんなりしてタックをしたらMRCの練習しているラインの中にいた。
上りだ。ほんのちょっとお邪魔して平行して走ってみる――だめだ。やはり同じ角度を維持できない。離脱。一気に下って離れたところで上って邪魔しない程度の場所へ。
ランニングでのんびりと下りながら練習風景を眺めた。
ちょうどスタート練習をしようとしているところだった。Sさんの姿も見えた。見ていてあれはかなりの練習になるというのがわかった。Sさん、うまくなるだろうなぁ。
去年まではぼくの方が紙一重で勝てていたけど――どんケツあらそいとの話もあるが――今年中には抜かれてしまうだろうなぁ。Sさんがレースで二十番以内にはいるようになったらレースやめようかしらん、と思いつつ、下っていく。
どことなく息子の成長を見守る父親の気分だった。
途中、Tがボードの上で休んでいたので合流してしばし雑談――そのあと、ぼくは延々と菊名海岸までランニングで戻った。
N島さんとの上り角度のあまりのちがいにがっくりきていたが、スケグが 62cm だったことを思いだしてすこし元気をとりもどす。でもやはり、70cm で乗りこなさなければ、ならないか、と思うと、げんなりした。
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Takehiro Yamada