先は長いぜ




2002 年 11 月 9 日(土)
御前崎菊川河口
晴れ
Sail:ZONE 4.7(NEIL PRYDE)->CORE 4.1(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 255



 9時半。
 鎌倉へ向かう途中、神奈川県海上保安庁の情報を聞いて車を停めた。
 伊豆方面の西風が落ち、かわりに神奈川県下は北西の風が強くなってきている――やはり、と半分、考えた。昨日、某ウィンドサーフィンのショップのホームページでは今日の湘南は大西だといっていたが、ほんとか、と思っていたのだ。予想気圧配置の感じからは大西はないんじゃないか、と――。確信はなかった。イワモトのホームページでは御前崎はババ吹きだという。
 御前崎もアウトか。
 Tに電話した。今、逗子だという。やはり風はないらしかった。
「沼津に行くよ、おれ」
「えっ」
「沼津なら西風、とどいているでしょ。だめなら御前崎だ」
 もちろん最後のセリフは冗談のつもりだった。


 Uターンしたぼくは246号線を西進して厚木インターから東名高速で沼津をめざした。
 次の海上保安庁の最新情報を聞いて考えこんでしまった。
 伊豆方面の西風がさらに落ちていたのだ。
 沼津、だめかも――。
 菊川までいっちまうか?
 あそこなら確実に吹いている。吹きすぎて乗れないかもしれないが。
「ババ吹きかぁ」
 沼津インターは渋滞していた。近くに見える旗も強風にひるがえっているという感じではなかった。インターの出口を通過する。富士インターまでの間で左のサイドウィンドウ越しに海が見えた。白波がたっているようだ。西風が届いている。煙突の煙も真横だ。富士インターで降りて沼津へ向かうか――通りすぎた。
 ババ吹きでないことだけを祈っていた。
 菊川インターまでの途中、あまりの横風に車体が異様に揺れる。


 フル高速で菊川インターを下りて御前崎菊川河口。
 吹いていることはわかっていた。
 太平洋自転車道から菊川河口の上側の海を見た。瞬間、吹いてない、と思った。出艇しているウィンドサーファーのセイルはだれもが 4 のセイルに見えた――動きは完全にアンダーだ。波は肩ぐらいできれいに横に長く、フェイスも悪くないようだ。きれいなフロントライディングを目撃した。
 海岸線まで出てあたりを見回した。
 やはり想像ほど吹いてはいない―― 5 でもいいんじゃないか。風向きはめずらしくサイドからサイドオフという感じだ。
 4.7 を張ることにした。
 駐車場でセッティングしていると、他のセイラーにセイルサイズを聞かれた。4.7 と答えると、のけぞった。4 でインサイド、走ってなかったからねー、とぼくはつづけた。
 板は NG。
 ドライスーツを着てビーチ際に立ち、軽く柔軟をしながらぼくは苦笑していた。
 風が上がっていた。
 ――これは、と思う。
 4.7 は完全にオーバーだ。
 とにかく一本と、出艇してのたうちまわり、風下に流された。そのまま、ビーチにあがると、セイルをもって駐車場へ逃げ帰った。
 さっきたずねてきたセイラーにいう。
「完全に無理」
 セイルは引きこめず、ハーネスかけて無理矢理引きこむと、ちょっとした波で跳ねた拍子にオーバーパワーでノーズがさがって水面に突きさっさてしまう。


 4.1 にセイルチェンジした。


 風はガスティだった。
 爆弾ブローがくる本栖湖のようなガスティではなく、強風と弱風が交互に交代するようなコンディションだった。アウトは 4.1 でオーバーだ。ジャイブは――ぼくの腕では――無理だが、乗れなくはない。
 ただ、強い風と波のせいだろう。
 カレントがひどい。
 あっという間に河口まで流された。


 こりゃ、修行だな、と思った。
 4.7 ででたとき、以前、骨折した左親指のつけ根を痛めていた。
 つき指したような感じだった。


 たまたまアウトにでれたとき、でかい波に遭遇した。目の前だ。
 アウトだというのにフェイスがたち、割れて巻きそうだった。うわぁ、と目を丸くしてつぶやいた。必死にベアさせて波から逃げた。やばいポイントは避け、その波をこえた。
 その瞬間、だれか、海をダルマ落とししやがった。
 着水するまでずいぶんと時間がかかった。


 三時すぎに駐車場に戻る。
 寒気がきている関係か、けっこう寒い。左足のふとももの裏側に筋肉が二度ほどつっていた。風がガスティなのでベアさせるため、板を尻の下に引きつける動作をずっとやっていたからだろう。
 エネルギー補給したあと、陽のあたる芝生にすわってぼんやりした。
 全然、乗れてない。


 海に戻った最初の一本。気合いをいれた。集中した。アウトにでた。そのまま、アウトサイドを二、三往復。ジャイブはまったくできなかったが、乗れたこと自体に満足する。
 インサイドに戻るついでに波に乗ろうと、あたりを見回して波をさがす。
 一本、タイミングがあった。
 バックサイドで波のトップへふる。予想より早く崩れた。やばい、と板を返す。瞬間、どんっ、とスープに背中をどやされた。前にかるくふっ飛んだ。衝撃で前のフットストラップから足が抜ける。


 夕方、暗くなるまで海にいた――つまり乗っていたわけじゃないわけだ。乗っていた瞬間もあることはあるが。
 今日は波がいいのか、きているメンバーがうまい人間が多いのか、けっこういいフロントライディングを見ることができた。


 まずはセイリングするエリアを維持できるようにならないとだめだな。
 今さらながら考えた。
 流されているばかりじゃ、波のある場所にいけない。


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Takehiro Yamada