
2002 JCBA EAST SLALOM 第1戦 & MID RACING 第2戦
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2002 年 6 月 1 日(土)
本栖湖FANビーチ
晴れ
Sail:RX1 9.3 -> V8 7.5(NEIL PRYDE) Board:FALCON 90->DROPS 9'6"
漣ひとつたっていない鏡面の本栖湖を前にしてスキッパーズ。ミーティングがはじまった。岩橋プロの説明によると、アップウィンドのレースを2レース。そのあと、昼食をはさんでダウンウィンド・スラロームを行なうという。
スキッパーズ・ミーティングの終了と時を同じくして、本栖湖に漣がゆっくりとひろがってだす。風だ。吹きはじめた。10時。思ったよりはやい吹き出しだった。まだ弱いが、少しずつあがってきている。
すぐにフォーミュラならプレーニングするぐらいになった。
大会に参加している選手がセイリングしはじめる。フォーミュラでドライブジャイブする選手がいて目が点になる。
ぼくも出艇した。
ほとんどフォーミュラには乗りこんでいないので少しでも乗りこんでおこうというわけだ。以前乗った感じを元にブームはいつもより高目にセッティングしてある。ブローをつかんでプレーニングした。上らせる。ぐりぐりと上ぼっていく。乗っているうちに、風がかなり東にふれていることに気づいた。しかも山から吹きおろしている風が放射状にひろがるらしく、ポートでビーチ近くまでいくと、ほとんどビーチラインと平行に走ることができる――もちろんぎりぎりの上りだが。
セイリングしながらセイルをチェックした。それで気づいた。
シェアーチップが半立ち状態になっている。いつもはもう少ししっかりしている。セッティングミス? 岸にあがって調べてみよう、と思いつつも乗りつづける。
懸念の下りを何本か試してみた。風向きがいつもとは、ちがっているため、深く下りすぎて止まりそうになる。
下って上って、大きな弧のレイルトゥレイルも試してみる。おもしろい。ジャイブもはいり口ぐらいだが、ドライブさせることができることがわかった。息がすぐ上がってしまう。けれどフォーミュラはおもしろい。以前から――ワイドスラロームに乗っているときも思っていたが、水面を面として乗れる。かなり自由に面を動ける。これはこれでけっこうおもしろい、と。
フォーミュラも悪くない。
そう思いながらビーチにあがると、T田さんにいわれた。トップが外れているよ、と。
調べてみると、シェアーチップが壊れていた。
去年の同じレースではセイルを破り、今年はシェアーチップ。
レース前から気持ちは落ちこみはじめる。いきなりいいわけモード全開だ。
スタートラインは去年と同じく元競艇練習場のビーチのそばだった。
大部分の選手がビーチの水際でスタートのタイミングをはかっている。
ラインはものすごく風上有利に見えた――実際はそれほどでもなかったらしい――。
ぼくはスタート十秒前にビーチを離れた。
第一線のうしろでスタートフォーンを聞いた。すぐにプレーニングできれば――できなかった。前方にM下さん、F島さんのレースボードを駆る後ろ姿が見えた。ふいにF島さんな沈。そのそばまでいったとき、本部艇のフォーンが断続的に鳴らされるのが聞こえた。ゼネリコだったらしい。
ぼくはすぐさまビーチに戻って水際に立った。
すぐ風上にはT田さんがいた。悪いイメージでスタートしてしまった、と反省している。ふと見ると、N沼さんが完全にレースボートを岸にあげてしまっていた。
再スタートも同じように十秒前にビーチを離れよう、と考えたのがまちがいだった。
同じタイミングでビーチスタートする他の選手のブランケットにはいってしまい、完全にはまる。どうにかスタートラインにたどりついたときには、スタートフォーンが鳴ってしまっていたのはもちろんのこと、六十艇ちかくのボードがスタートしたあとの水面はひどく荒れていてプレーニングにはいることができなかった。
あっ。
――デジャ・ヴ。
去年もまったく同じ目にあったことを思い出す。
馬鹿。
とにかく角度を落としながら粘っていたらプレーニングした。目の前にSさんがいた。風下側からスタートしてぼくと同じパターンにはまったらしい。まだ、プレーニングしていない。それを抜いて止りそうになりながらしばらく走ったあと、タック。ビーチの方へ。ちょうどゴールラインあたりに辿りついた。運営を手伝っているM木さん、T島さん、G藤さんが立っている。あきらかに最後尾なので恥かしさのあまり、手前でタックしたくなるが、それは我慢してビーチのそばまでラインをのばしてタック。
今度はすぐにプレーニングできたが、上り角度が悪いような気がする。
――シェアーチップのせいか?
――シェアーチップのせいか?
――シェアーチップのせいか?
何度も頭の中でくりかえした。完全にいいわけモードにはいっていた。
そのぼくの前方をスターボーでSさんがフルプレーニングで横切っていった。クロスするような近さではなかった。完璧に抜かれてしまっていた。まずい。
ようやくぼくが上マークにたどりついたときには、ぼくのうしろに人はなく、ぼくの前には鏡のような水面が拡がっていた。
去年ですら――去年は普通のスラロームボードでの参戦だった。今年よりもはるかに不利な道具的だったにもかからわらず、ここまで遅れなかった。
サイドマークを遠望しながらカニンガムをつかってアウトを緩めた。
去年はカニンガムもつけてなかったんだぞ!
サイドマークあたりに三枚ほどセイルが見えたが、追いつけるとは思えなかった。
サイドマークまでの間に風がなかったのだ。三枚のセイルのあたりには風があるらしく、動いては沈している。その中のひとりはSさんだとわかった。かなり苦労していた。はまっているようだ。
Sさんの失敗を祈りつつ、とろとろと走っていく。
ふいに、ぐっとセイルに力を感じた。
風上側をちらりと見ると、ブローがきていた。沈は絶対しない、と決意した。ここで沈したら絶対にSさんには追いつけない。
ブローを受けた。下りの状態にだったので、一瞬、バランスを崩しそうになったが、なんとかプレーニングにはいることはできた。サイドマークまでは風が切れないことを祈る。切れなかった。慎重にジャイブして下マークへ。
その段階でたぶんSさんをかわせただろうことはわかった。
下マークまでの半分ほどで風は切れたが、下マークの回航ではSさんともうひとり――この人は普通のスラロームの板での参戦だったが――に先行できた。ゴールまでに余分なタックを打たないように長めにラインをのばしてそのままの順位でゴール。
I田さん、Tの姿は一度も見れなかった。
――そのことにはひどく脱力した。
ひとり昼食をとってぼくは 7.5 のセイルを車からひっぱりだした。
ダウンウィンド用にだ。
昼食のあとにダウンウィンドをやるというスケジュールが変更になっていた。第2レースのあと、セッティングしている暇はないだろう。
第2レース。
第1レースの失敗を反省して早目にビーチをはなれた――といっても1分前だったが。第一線のうしろにちかよる。目の前の艇の風下側が大きく空いている。ラッキー。そこをプレーニングして抜ければ、OKだ。
しかし、スタートのタイミングがわからなかった。
十秒前まで腕時計をちらちら見ていた。何秒前に走り出せば、いいんだろう、と思っていると、ぼくの前、風上にいた艇が横流れしはじめた。F社のU上さんだ。あれれ、と思っている間にぼくの前を横切ってスタートラインの空きエリアに飛びこむと、プレーニングしてスタート。そのまま、行ってしまった。
あわててそれを追おうと、スタートフォーンを聞きながらセイルに風をいれたが、風上の艇のブランケットに断続的にはまる。ふたたび、先行艇の荒らした水面の餌食に。
それでも第1Rよりもはるかにいい位置にいた。
――が、ゼネリコ。
再スタートは同じくらいの位置からスタートできたが、風下艇との間に空きがなく、角度をおとして加速させることもできないホープレスポジション。風下艇がプレーニングしないまま、ずりずりと上ぼってくるのだ。内心悲鳴をあげながら風下艇のうしろを通って下らせたが、荒れた水面にまたもやプレーニングもできず、一番風下の位置まで落ちる。
十メートルほど前方にI田さんが見えた。まだ、プレーニングしていない。が、すぐにI田さんはプレーニングして見えなくなってしまった。
こちらはまだプレーニングしない。
また、(たぶん)最後尾だ。
ようやくプレーニングできてラインをのばす。第1Rの反省2でタックは我慢したが、我慢がたりなかったらしい。タックしてビーチの方へ向かうと、第1Rと同じくまた、ゴールマークへたどりつくラインに乗っていた。
先行している艇が二艇、見える。ひとりはSさんだった。似たような高さにいるように見えるのに、Sさんの角度にあわせていけない。ぼくだけが風下へ落ちていく。
だめだ。
ラッキーブローがはいったのにオーバーセイルに耐え切れなかった。角度を落としてしのいでしまう。この件についても原因はシェアーチップが壊れていることにした。いや、絶対そうだ。理屈を三パターンほどこねあげた。
次のスタボーの上りで、Tを目撃した。
上マークからサイドマークへ向かう一群の中にいた。かなり調子よくかっ飛んでいっている。トップはサイドマークを回航しているところだ。シングル入りの可能性大か?
Sさん他、三艇ほどが上マークにアプローチしているころにもぼくはまだ、上マークにはタック二回分、足りなかった。ところがSさんたちはエアホールにはまってしまっていたらしい。ぼくがポートで上マークへアプローチしたときにもほとんどかわらない位置にいた。ぼくはタックと同時に上マークをクリアし、Sさんたちをかわす。
タイミングよくブローがきた。
プレーニング。
これでまず、後続艇に抜かれない――と思った瞬間、うしろから水切り音が近づいてきた。やばい。
抜かれた。
屈辱だ。艇速で負けた。ちらりとぼくを抜いた艇を見た。普通のスラロームボードだった。少し安心した。それならしかたない――もっとも上りで負けていたのはさらなる問題だが。
その艇の引き波とクロスして板を外へだす。
意識してなかったが、テクニック的にはこれは正しい選択だったらしい。
ぼくのブランケットと風が落ちはじめたことの影響で相手の板が停止した。
抜き返して先にサイドマークへアプローチ。
風は切れていた。
ノンプレーニングのまま、ジャイブにはいってが、痛恨の沈。
しかもアウトを緩めていたため、ウォーターがうまくいかない――水中でじたばたしているうちに後続艇に抜かれていく。セイリングに復帰するのにはしばらく時間がかかった。青空を見上げる暇すらあった。
ぼくが下マークに向かいだしたときには、さっきまで下マークあたりに溜っていた選手たちは消えてしまっていた。
下マークへのアプローチはほとんどランニングの状態だった。
本部艇からビデオ撮影していたので手をふったらセイルを水に落としてしまった。馬鹿だ。その上、ゴールへのアプローチにも失敗した
なのにだれからも抜かれず、だれも抜かなかった。
まわりに、だれもいなかったのだ。
本部艇が湖面を走りまわっている。
マークを打ち変えていた。ダウンウィンドスラロームを行なうのだ。気合いをいれなおしてヒートを待つ。第3ヒートだ。しかし、第1、第2ヒートが行なわれるたびに途中、風が切れてキャンセル。1ヒートも成立せずに、タイムアップ。フリーセイリング・タイムとなった。
FANビーチからビデオ撮影してくれる、という。
選手たちががんがん走る。
ぼくも DROPS 9'6" で出艇した。
ところがビデオのところまで行けない。
一発目のジャイブで失敗した。アプローチは悪くなかった。カーヴィングしていく。悪くない。セイルを返して、足をいれかえてないことに気づいた。あわてて足をいれかえているうちに沈した。半年ほどウェイブでセイルを先に返すジャイブを意識していたため、ステップ・ジャイブを忘れてしまっていたのだ。非常にださい。
憂さ晴らしもかねてガンガン、セイリングする。
アウトのラインで前方にI村さんを発見。追う。速い。I村さんはさらにその前方の艇を追いかけている。その艇がブローに激沈。
「うひょひょひょひょおおぉぉぉぉぉっ」
I村さんは奇声を上げて尻を叩いた。
リミットいっぱいのぼくとの艇速差はほとんどない。オーバーブローが山から吹き下してきた。耐え切れず、ぼくは風を逃しながら上りのラインに切れかえる。あっという間に上下に離れたが、I村さんめがけて下らせるとさっきと同じ位置関係におさまった。
I村さんがジャイブ!
スプレーを上げ、前傾姿勢でカーヴィングしていく。かっこいい。感動的な光景だった。そのまま、激沈してしまったが――。
閉会式。
F社のKさんが去年に引き続き、優勝し、二連覇を果した。
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Takehiro Yamada