逗子




2002 年 3 月 21 日(木)春分の日
逗子
くもり
Sail:CORE 5.3(NEIL PRYDE)->ZONE 4.7(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 255<-->WAVE265(MISTRAL)



 風の音で目醒めた。
 さすがに昨日、寝るのが遅かったので身体がだるい。
 Tに連絡してみると、三浦の「シャークス」にいた。沖は白波でまっしろだ、という。
 とにかく、車をだして海へ向かってぼくは出発した。
 1時間半かかって鎌倉のそばまできたところでT、Sさんに連絡をとる。彼らは逗子に行くつもりだとのこと。材木座の前を素通りしてぼくも逗子へ向かった。鎌倉の海は干潮のためか、波はほとんどなかった。
 逗子は1994年05月05日以来だ。
 八年。
 感慨深い。
 八年前、この海でウィンド中にぼくは左親指を骨折した。だから左親指は掌にたいしてすこし曲ってしまっている。別に恐怖感があったわけではないのだが、あれ以来、逗子の海にはいることはなかった。
 Tたちは逗子中央の駐車場にいた。
 満車だったのでぼくはそばの駐車場に車をいれた。
 海岸にでてみると、Sさんがちょうどセッティングしているところだった。4.0 でも走っているよ、というが、海を見ると、ウィンドの動きは停止していた。風も思ったほどない――波もない。ぼくが 5.3 を張るというとSさんは目を丸くした。
 板は浮力のあるこのところメインボードになってしまった WAVE265。
 風は南西。左からのオン気味のクロスオン。5.3 + WAVE265 でジャストアンダー。ブローでちょいオーバーという感じだった。逗子湾の右奥は風が通り抜けるのか、アウトにでていくと、風が強くなっているようだ。あまり岩壁に近づくと、風はなくなるが。
 波はやはりない。
 右奥の海底は岩場のためだと思うが、波がたちやすらしく、八年前、ヘッドぐらいの波にミートしてやりたくもないループをやってしまって大怪我をしたのだった。
 ジャイブしてインサイドへ。
 脛膝ぐらいの波に乗せて遊ぶ――でもうまく乗れていない。二度ほどセイルに裏風をいれてのトップターンを試みてみる。
 何度も逗子湾を往復した。
 一度、岩壁のイエローキャブの下あたりまで上ってみたが、波はほとんど立ってなかった。
 Tはぼくよりも風上のラインを往復している。
「アウトのジャイブは波に乗せられて気持ちいいーっ」とのこと。


 四時近くになって風が上がりはじめた。
 134 号線の下をくぐるトンネルの中で細かい砂が舞い上がりまくる。
 思いだした。逗子はこれが嫌なんだ。コンタクトレンズ使用者には地獄の苦しみである。八年たってもそんなところはかわっていない。
 ダウンの引きが足りないことはわかっていたので、いったんビーチにあがった。波打ち際にセイルを置いて首を傾げた。
 ぼくの 5.3 のセイルは「シャークス」のマスターの中古セイルを購入したので、トップ近くのパネルに「シャークス」のステッカーが貼ってあった。それが、ない。なくなってしまっていた。
 ――剥れちゃったよぉ。あんなもんが剥れるとはなー。
 よく見ると、フット近くのパネルに「ショアライン」のステッカーが貼ってある。
 しばらくなにが起きたのか、わからなかった。いつ「ショアライン」のステッカーを買ったのか、と思った。記憶にないぞ、と。
 気づいた。
 ぼくが使っていたのはSさんのセイルだったのだ。先週、御前崎に相乗りしたとき、取り違えたらしい。
 しかたないのでそのまま、ダウンを強く引き直して乗りつづけた。
 風はそれぐらいでは対処できないぐらいに上がる。
 ぼくは NG ACP 255 をひっぱりだした。
 だめだ。
 それでもセイルが完全にオーバーだった。


 車を別の駐車場に移すついでに 4.7 のセイルに交換した。
 波打ち際でどろどろになりながらセイルを換え終えて顔を上げると、風が落ちてしまっていた。Tが 4.7 でも走るよ、と無責任なことをのたまう。
 案の定、乗れなかったので、板を WAVE265 に戻した。


 夕闇が押しよせてきていた。
 風は西に振れてほとんど真オンになる。
 ポートスタートとスタボースタートがミートするコンディション。サーファーが二、三人でてきた。オンショアのため、ビーチから離れることができないので、サーファーを避けながらセイリングする羽目に――しかもサーファーがいるエリアは波が立っている。ドルフィンスルーでサーファーがライン上にいきなり現れたりしたらアウトだ。
 風が再び上がってくる。
 ぼくは板を NG ACP 255 にしてセイリングを続行した。
 しかし、すぐにオーバーセイルに苦しみだす。TとSさんは先にあがったらしく、道具を片付けはじめていた。ぼくもそれにならう。


 駐車場まで舞ってくる細かい砂にまみれながら道具を片づけた。


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Takehiro Yamada