
結局、流された
2002 年 2 月 10 日(日)
御前崎菊川河口
くもりのち、晴れ
Sail:CORE 5.3(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)
十時をすぎても風は吹き上がらなかった。
御前崎菊川河口。
いつもなら駐車場のまわりの林を強風が揺らし、プールの水面に縮緬がよりだす時刻だ。空は曇り空。どうやらそれがよくないらしい。
Tのハイエースから電源をもらってパソコンでレポートを書いたりして暇を潰す。
F島さんは車の掃除をはじめた。
昨日、千浜で乗っていたS川さんが現れた。
事故のことを聞く――ウィンドサーファーがひとり、亡くなったという話。驚いたことに某所でウィンドのホームページを立ち上げている人だという。F島さんは面識はあったのでショックを受けている。ぼくもショックを受ける。けっこう楽しみにしていたページだったし、自分がホームページを立ち上げるきっかけのひとつになったところでもあったからだ。
――合掌。
昼をすぎても風は上がる気配はなし。
F島さん、S田さん、S川さんは帰路につく。あとに残るのはT、Sさん、それにぼく。Tも帰りたがっていたが、あしたまでいることをぼくが決定すると、彼ら――SさんはTの車に相乗りしてきたので選択の余地なし――も残ることに。
風はないが、ひとり海にでているセイラーがいる。
P社のIさんだ。大きめのセイルに浮力があるボードというセットだろう。ひとり波をとり放題。でも風がたりないので辛そうにも見える。
そうこうしているうちに二時をまわってようやく風が上がりはじめた。
駐車場のウィンドサーファーたちが活気づきはじめる。セイルサイズを聞く声が飛びかう――太平洋自転車道から海を見下ろすセイラーたちの口元はだれもが緩んでいる。
大き目のセイル、ボリュームのあるボード、という組み合わせになるのはしかたない。
さっさと準備してぼくは海へ。
風は微妙。アウトは充分、インはスカスカ、という感じだった。波もあるとはいえなかったが――膝ぐらいか――時間もないので目を吊り上げて乗る。湘南でウィンドをしているみたいだった。がっついていた。
インサイドでポートのキックジャンプとアウトに出るとき、スタボーでジャンプを各一本ずつやる。
波乗りはほとんどできず。
でかい板で小さな波を攻めるほど腕前がぼくにあるはずもなく、それでも意地になってフロントに振ってみようとしたが、どれもだめ。うまい人は菊川の河口にたちはじめた波でウェイブライディングして遊んでいる。はでなウェットスーツに身を包んだ女性セイラーが目立っていた。
――陽が翳りはじめる五時まで乗りまくった。
ウェイブをやったというよりスラロームに乗っているようにひたすら往復をしていただけだったが。
いつものパターンのように風下に流されるということもなく、無事に出艇した排水口前に戻ってこれた。やはりか、と自分に得心。というのもセイルのセッティングをかえたのだ。イワモトでいわれた通り、ダウンの引きを強くした。そうすることでセイルは板のようにパンパンになってしまうが、スキニーマストがベンドするので風がはいるとセイルにドラフトができるのである。
その話をイワモトで聞いたとき、思った。ぼくが流されやすい原因はこれではないか、と。いつも上らない、と感じていたのだ。マストがベンドしてドラフトが発生するなら今までのぼくはドラフトが深い状態でセイリングしていたことになる。
深いドラフトはパワーはあるが、上るのには適していないのである。
戻れた自分に調子に乗ってしまった。
インサイドの波でフロントに振る。スピードがない。もっと。もっとスピード、と体重を前にもっていった。前ストラップ片足でセイリングしているような状態――奇妙な感じを受ける。ボトムの海面の反発力を感じる――が、崩れてきた波にセイルのアウトを喰われて沈。
ちきしょう。
今の感覚はなんだったんだろう、と思っている暇もなく、次の波に巻かれた。ウォーターしようとしてセイルがだるだるになっていることに気づく。
マスト?
ブーム?
とにかくどこか、壊れた。しばらくその個所はわからなかった。見当たらない――でもセイルの状態はおかしい。セイルが破れているわけでない。
わかった。
アウトホールラインが外れていた。
結局、ビーチまで泳いでいるうちに目一杯流された。
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Takehiro Yamada