
三浦どん吹き、ひさしぶり
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2002 年 1 月 19 日(土)
三浦菊名海岸
くもり
Sail:V8 7.5(NEIL PRYDE)->CORE 5.7(NEIL PRYDE) Board:DROPS 9'6"->WAVE265(MISTRAL)
三浦の海岸沿いの道路へでるT字路の信号で停止したとき、携帯が鳴り出した。
Sさんからだった。
風はどう、という。まるでぼくが海が見える場所についたのを見透したような絶妙なタイミングだった。まさかな、と思わず、バックミラーをのぞきこんでしまう。
あたりまえだが、Sさんの姿はなかった。
「ないよ。風はない」
「うそ」
「ほんと」
シャークスの予報では、といわれても見える限りの海面に大したブローラインは見えなかった。
ぼくも結構ショックだ。
今日、三浦は吹くと見当をつけていたのだが。
予想天気図では冬型が崩れて北東の風が吹きやすくなる感じだったのだ。天気予報はなんといっていたか、知らないが、この気圧配置なら御前崎→伊豆を回ってくる西風がない分吹く確率は高いはずだ――冬型がきまると西風と北東風がぶつかるためか、三浦あたりの風は期待できない。
外したのかもしれない。
携帯電話を切って三浦の海岸沿いを走り、菊名海岸へ向かう。
残る期待は三浦マジックだけだ。
マクドナルド前を抜け、菊名海岸が見えてきた。海に出ている艇がある。おや、と思った。プレーニングしていたのだ――ゼロセイル? ロングボードらしい。
吹きはじめたのかもしれない。
駐車場に車をいれる。
I田さんのステーションワゴンがすでに来ていた。駐車場前の砂浜にセッティングされたセイルとスターのフォーミュラボード。挨拶をしてセイルサイズを聞くと、9.9 だという。
海を見た。
えっ?
白波が立っていた。
さっき見たロングボードはYRNのHHコンビだったらしい。
風下側にふたりの姿が見える。
風があまりにも急に上がりだしたようなので、道具のチョイスに迷う。迷ったあげく、DROPS 9'6" ――セイルは 7.5。セッティングしている間にも風は上がっていく。頭をかかえてしまう。オーバーだ。
Sさんが到着。
I田さんが海に出た。全然、走らない。
「えっ! 風、ないの!」
Sさんが驚いた声をだしたが、オーバーセイルすぎて風を逃がして乗っているせいだった。沈。しばらくして見ると、I田さんはウォータースタートもできないぐらいのオーバーセイルらしく、リカバリーできずに沖ノ島のさらに風下へ流されていった。
ぼくの準備が整ったころ、Tが到着した。
セイルサイズを迷ったTはぼくの様子を見てから決めるとのたまう。しかたねーなー。出艇。いきなりのオーバーセイルに筋肉が悲鳴を上げた。しまった。先週、ウィンドしてないので身体がなまっている。握力があっという間になくなった。
プレーニング。
しかし、恐くてフルでセイルを引き込めない。
しかも風が若干オンがかっているため、暗礁のある個所を通過するしかなかった。うねりが掘れている――つまりそこは浅い!――所を祈りながら通り抜けた。沖ノ島の風下側にある定置網の手前でどっこらしょジャイブ。スタボーに切り換え、今度はビーチへ向かう道のり。チョップに弾かれないので、ポートよりはセイルを引き込める。それでもオーバーセイルにかわりはない。
ビーチに上がってセイルのアウトを +3 センチ、のばす。
海を見ると頭を抱えてしまうほど吹いている。ウェイブをだそうかなぁ、と弱気になる。せっかく強風対策したのだがら、とスラロームで再出艇。さっきよりも多少は楽になったが、本当にそれだけだ。かっ飛べるのはうれしいが、チョップに弾かれまくり、恐怖心がつのる。ジャイブは失敗――うまくない。すっかりやり方を忘れてしまっている。それともオーバーコンディションだからだろうか。
二、三往復で息が上がった。
ビーチ際でキックジャンプしてビーチに上がる。
へろへろだ。
見ると、K地さんがきていた。
HHコンビはセイルを張り直し、ショートボードをひっぱりだしているところだった。
I田さんが風下の方から歩いてきた。流されちゃった〜、と笑っている。そして、小さなセイルとボードの準備しはじめた。
迷った末、ウェイブの道具をセッティングする。
乗れるのは乗れるが、全然、スラロームは楽しめなかったからだ。
これだけ吹いていれば、ウェイブでも充分だろう。K地さんもウェイブででていることだし。5.7 のセイルならジャストだというし――もっとも沖はオーバーらしかった。
ビーチスタートしてすぐにはプレーニングしなかった。ジャストアンダーの風。ブローにあわせて下にノーズを向けると、プレーニングした。
瞬間、あまりの軽さに感動してしまった。
スラロームが鎧だとしたらウェイブは絹のようだ。軽い。
――やっぱ、ウェイブだっ! ウェイブだよっ!
感動のあまり喚き散らしながら沖ノ島の脇をすぎる。もうスラロームなんか、やめてしまおうか、と考えてしまうほどだった。
ポートでビーチに向かい、ビーチ際のうねりにあわせて板を回し、ひょい、とキックジャンプ。楽〜っ。
ビーチにいるTとSさんに近づき、大声で宣言した。
「やっぱ、ウェイブだよっ!」
ふたりには苦笑されてしまった。
TはF2のピータートーメン。Sさんはバーレー・ワークスの280に乗っている。
Sさんはセイルのシェアーチップが壊れているというのに、にこにこ笑っている。よほどうれしいのだろう。あまりのオーバーにぼくが、今日はもうおしまいっ、帰るっ、といったら顔をひきつらせて――風、なくなったのっ! と叫んだSさんとは同一人物とは思えない。
I田さんもスラロームの道具を準備でき、再び、海にでた。
HHコンビのうち、H野くんは古いスラロームの板に新品とおぼしきスラロームセイルで出艇している。K地さんははるか沖合いだ。
スラロームで再出艇してみると、風はアンダーになってきていた。
プレーニングせずに走っていたら思い切りスケグを暗礁にヒットしてしまった。前につんのめる。しかし、そのまま、暗礁地帯は抜けることができた――もっともスケグは鋸の歯のようになってしまっていたが。
沖ノ島の向こう側まで出た。
Tはすでに沖ノ島の向こうで乗っていた。
沖ノ島、風下側の鉄柱、沖合いの定置網の三点を結ぶ三角形のエリアでセイリングしている。
ぼくは抜こうとTを追う。
が、さすがに強風用スラロームに DROPS ではトップスピードに差がありすぎる。追いつけない。ついていくので精一杯だ。逆に一度、抜かれそうになる――風が若干、落ちぎみのときだったのでなんとか抜かれずに済んだ。
そのうち、ぼくとTのセイリングにI田さんが参入。
三人で走りあう。
抜かれることもなかったが、抜くこともできなかった。ジャイブの失敗が失点になる――それにしてもジャイブがへたになっているのに苛立つ。セイリングのフォームもどこかしっくりきていない。ハーネスの位置か、と思ったが、セイル手とマスト手を順番にフリーにしてワンハンドセイリングしてもあまり違和感はない。なんなんだろう?
何度もジャイブしているうちに、スタボーからのジャイブで一本だけ気持ちのいいカーヴィングができた。
オーバーシート気味にジャイブにはいり、セイルのパワーポイントとボードを踏みこむ後ろ足が一直線に並んだと感じを受けたときだ。水面との反発力でキュンとボードが加速するようにカーヴィングした。
TとI田さんはまだ、セイリングしていたが、ぼくは疲れたのでいったん、海岸に戻る。Sさんも戻ってきていた。もう今日は上がろうかな、といっている。そのうち、津久井浜の方からブローがくるのが見えた。
行こう、というと、Sさんも出艇した。
沖ノ島のあたりまできたとき、風がかなり落ちていることに気づいた。
Sさんに悪いことしたな、と思っていたら、Sさんはプレーニングさせるために思い切り下っていってしまった。ほとんどリーチングだ――わー、あれだと戻ってこれないぞ。
案の定、そのまま、Sさんは消えてしまい、風下のはるか彼方の海岸に到着したという。
ぼくは弱々しい風の中、乗る。
I田さんがいなくなり、Tもボードを換えるといってビーチに戻っていってしまった。
ひとりセイリング。
そうしていると、風下の方から上ってくるセイルがあった――Sさんか、と一瞬、思ったが、ちがっていた。I田さんだった。フォーミュラと 9.9 というビッグセイルだ。午前中に流され、置き放しにしてきた道具をとってきたのだ。
あっという間に抜き去られてしまった。
そのまま、菊名海岸に戻っていくI田さんについていくようにぼくもビーチに戻った。
いれかわりにTが DROPS 9'6" で出艇していった――彼はプレーニングしていたが、ぼくには無理のような気がする。しばらく風が上がらないか、と遅めの昼食をとったりしていたが、風は完全になくなってしまった。津久井浜の方はまだ吹いていたが。
K地さん、HHコンビはもう上がってしまっていた。
二艇分の道具をばらさなければ、ならないので、ぼくも終りにする。
おそらくTは津久井浜まで上っていってしまったのだろう。
なかなか、帰ってこなかった。
V8 のセイルをばらしていてカーボンブームが歪んでいることに気づいた。
なんじゃぁ、と思っていたらブームの長さが左右でちがっていた。214cm と 210cm。これじゃ、乗りづらかったわけだ、と納得する――本当にそうなのかはわからない。自分の腕のせいだということにはあえて目をつぶることにした。
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Takehiro Yamada