流されて、千浜




2001 年 12 月 22 日(土)
御前崎菊川河口
晴れ
Sail:CORE 4.1(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 255



 風はあった。
 ビーチでは砂が褐色の帯になって低く飛んでいる。波打ち際の濡れた砂は急速に乾いていく。よく晴れた陽射しの下、銀色の海の波は腰から胸ぐらいあり、まだ、形を保ってくずれてきていた。風は若干、オフにふれていてサイドオフという感じだ。
 御前崎菊川河口。いつものプールサイドの駐車場に停めたTのハイエースの中で仮眠から醒めた。すでに十一時をまわっていた。Tはウィンドのセッティングにとりかかっている。だれかと話している――どうやらF社のKさんらしかった。
 ぼくも海をチェックし、セイルサイズを 4.1 と決め、セッティングにとりかかった。
 Kさんは 5.0 で出艇してすぐにセイルを小さ目のものにチェンジしたようだ。
 ようやく道具を波打ち際へ運ぶと、先に出艇していたTが戻ってきたところだった。うれしそうに笑っている。
 ぼくも海に出た。
 出ようとした。
 アウトを強く引きすぎたのか、風がうまくつかめない。
 何度かビーチブレイクに潰されてようやくブローをつかんで走り出したが、やはりどこか変だ。しっくりこない。うまくプレーニングしない。
 しかたなくハーフプレーニングのまま、方向転換してインへ。
 途中、うしろからきた波に押されて板が加速しはじめた。
 セイルの向こう側に、ジャッキアップしていく波の斜面が見えた。瞬間、頭がかっとなった。
 ――フ、フロントォッ!
 うわずった声が頭の中で響いた。
 ターン。しかし、波のトップへはちっとも届かない。もっと回しこもうと身体を傾けたらそのまま、パタリと倒れてしまった。セイルエンドを海面につけてしまったのだ。四つん這いになったぼくの下にセイルとボード――さらにその下では波がくずれてスープになった。どしゃどしゃと上下に暴れるスープが潰れてしまったところでセイルとボードから下りた。
 そこは菊川のレストハウスの前だった。
 だいぶん下ってしまった。
 ビーチでセイルのアウトをゆるめ、ふたたび、出艇。
 何度か、失敗しながらもなんとかアウトへ出れた。風は 4.1 でもきつい瞬間がある。しかし、どこかうまく乗れていない。スィートスポットが外れている感じ。うねりでは簡単に弾かれて、空中に放りだされてしまう始末だ。
 しかし、問題はジャンプしてしまうことよりも着水だった。
 テイルからちゃんと着水しているのだが、板がヒールに敏感すぎるほど反応してラフしてしまうのだ。時にはノーズが顔面に向かって跳ね上がってくるように感じるほどだった。反応良すぎだろう、これは――。
 その上、うまく板を走らせることができない。
 これがいわゆるテイルロッカーのきつい板のむずかしさだろうか。
 頭の中は疑問符でいっぱいだ。
 いったん、ビーチに戻ると、今度は菊川の河口だった。レストハウスよりもさらに風下だ。
 徐々に風下へ流されている。
 菊川の河口を越えるのは嫌だな、と思っていたら次の一本であっさり越えてしまった。


 河口を越えてしまうと、今度はゲッティングアウトの成功率も極端に悪くなってしまった。ちょうど風がガスティになってしまっていただけなのかもしれないが。波に潰され、ビーチに戻り……ということをくりかえしているうちはよかった。
 ビーチに戻ったところで道具を引きづって風上へ歩いていけたからだ。
 ゲッティングアウトできてしまったのが運の尽き。
 沖へ思い切りラインを延ばして上ぼったつもりが、戻ってみると、千浜西だった。
 出艇した浜とは別の海岸である。
 菊川からここまで来てしまったのははじめてだった。
 呆然と太平洋自転車道沿いにある千浜西の小屋を見上げるしかできなかった。
 涙がとめどもなく流れ……などということはなく、駐車場側にあるトイレで用を足して海へ戻る。千浜西からアウトにでて戻ってくると、出艇した場所よりさらに風下で……。
 いったいおれはなんなんだ?


 しかたないので頭にセイルとボードを乗せて延々と波打ち際を歩き、菊川を渡ったのちもぼくは歩きつづけ、排水口まで戻った。頭が擦れてハゲてしまうのではないか、と心配になるほど歩いた。
 そこでようやくTと再会することができた。


Return To HomePage | Return To List Page

Takehiro Yamada