
なにがなんやら
2001 年 11 月 17 日(土)
御前崎菊川河口
晴れ
Sail:ZONE 4.7(NEIL PRYDE) Board:NG ACP 255
やはりセイルとボードを同時にかえるもんじゃない。
菊川は「きっかわ」ではなく、「きくがわ」だそうだ。ひさしぶりに訪ずれた御前崎菊川はやたらと遠く感じられた――四時間、かかった。仮眠をとろうと思っていたのに、風はもう吹いていた。途中、富士の工業地帯で、煙突の煙が真横になってなかったのでいまいちか、と気になっていたのだが。
めずらしく雲があり、いつもほどの風ではなかった。
それでも充分だ。
三浦にいるTに連絡をとってみると、三浦に風はないという。にやり。
次にF島さんに電話。
こちらに向かっている途中だという。今年のF島さんは新しいボードを手にいれ、気合いがはいっている。
F島さんもぼくも今日が新しいウェイブボードの初乗りになる。
F島さんはバーレーのカスタムの中古。ぼくは NG の ACP 255。もちろん新品だ。おほほほほほ、と思わず、タカビーねえちゃんになる瞬間だ。
セイルは夏に NR を破ってしまっていたので、中古で ZONE を手にいれた。ブームは伊豆白浜で折ってしまったので、買い直した。おかげでセイルもボードもはじめて。何がなんやらわからん状態になってしまった。ハーネスラインも新調したことも大きい。セッティングは適当。いきなりゲッティングアウトで失敗して波に巻かれる。
最初に直感したとおり、5.3 のセイルを張ればよかった。風がたりない。いつもより早く出艇したこともある――菊川の河口あたりではJナンバーのセイルが往復をくりかえしている。バーレーとシマーセイルの試乗会をやっていてプロがきていた。Jナンバーは松井プロと石原プロらしかった。
ぼくはセイルのセッティングを変えて――アウトを緩め、記載されている数値よりも -2 にする――再び、ゲッティングアウトしたが、また、潰された。ボードをベアできないのだ。馴れてないということもあるだろうが、ボードに浮力がないせいもあるだろう。今までいかにボードの浮力にたよっていたのか、と痛感する。
ウォーターでビーチにとってかえす。
波にあわせた。すーっと板が軽く波に乗った。そのまま、バックサイドに――脛ぐらいの波だった――ふってトップターン。簡単にくるりと回った。ミストラルのときは全身で回してやらなければ、いけなかったのに、だ。もう一度、バックサイドでボトムターンして今度はスープにあてこんだ。くるり。楽だ。波になじむという感じ。ボリュームのせいもあるのかもしれない。しかし、テイルロッカーのおかげのような気がする。
もちろん先入観という可能性もある。
ショップイワモトのホームページのアドバイスのページに読んだ知識を元に、現象をそのように解釈しているという可能性――。たとえば、ZONE + スキニーマストのインプレッション。まさにその組み合わせでぼくは乗っていたのだが――ぼくがその組み合わせを購入してからアドバイスページにそのことが載った――、たしかに CORE のときには経験してなかった癖のあるあつかいづらさを感じる。走り出しで風をいれた瞬間、かなり強く前にもっていかれる感覚があるのだ。
これはぼくだけの感覚ではなく、同じセットを使用しているTも同じことをいっていたので錯覚ではないだろう。
たしかイワモトでいっていたのは、ブローなどがはいったとき、サイドベンドしたスキニーマストが元に戻ろうとしたときの反動が ZONE など、硬いセイル系のものは半端ではないので、あつかいづらいということだった。
走り出しはそのような状況だし、ジャンプしてしまったとき、着水でやたらとスケグが抜けてしまうのはまさにそのせいのような気がする――もっとも後者はぼくの腕かもしれない。今までよりはるかに小さなスケグを使っているのだから。
いずれにしても午前中はまったくうまく乗れず、菊川の河口――また、このあたりは川の水のため、思い切り、冷たいのだ――までいってしまう。
正直いってめげた。
ひさしぶりの風ということもあって人口密度が妙に高い日だった。
午後から風が上がりはじめる。ブローは 4.7 でオーバーな感じだ。乗れないほどではないが。波は……ない。もちろんフラットということはないけれど、脛膝。しかもぐしゃぐしゃ。どうしようもない。
ZONE のセッティングが気にくわず、ダウンの引きを強くする。第二バテンがかなり落ちぎみになる。それでだいぶん乗り易くなった。アウトにでれた。が、上ぼりがとれない。出艇した場所に戻ってくるのがやっとだ。
足が――とくに左足のふくらはぎが何回となくつりかける。これは波越え、スープ越えのとき、 後ろ足を引きつける動作をするためだろう。
アウトでは練習でレイルゥレイルをやってみるつもりだったのだが、ぼくは根性なし。
そして、いつものように一往復ごとに陸に上がってしまう。
インサイドでジャイブしろよ、山田っ。
ハーネスラインが長すぎることもあって腰痛が発生していた。うーっ。こんなことならアジャスタブルのハーネスラインを買えばよかった。位置も全然、あってない。大きく広げているので乗れるのは乗れるが。
風上の方から歩いてくる人影。新品のセミドライに身を包んでいる。そのため、一瞬、F島さんだとは思わなかった。どうしても夏のF島さんの姿の印象が強い。昼飯をくうときにF島さんの車が到着していたことには気づいていた。
にこにこと笑いながらF島さん。乗せて、という。
セッティング、むちゃくちゃですけど、と貸す。沖にでて戻ってきた。いいねー、という。乗りやすい、と。八万でどう、とも。
さて質問です。
――ぼくはこの板をいくらで買ったのでしょう?
F島さんも新しい板のボリュームのなさにとまどっているらしかった。にこにこ笑いながら河口までいっちゃった、といっている。
波越えしたあたりでちょうど風がなくなっていて――そのあたりを越えると風向きが振れるので、風がぶつかりあっているせいだろう――よくそこで沈する流される波に巻かれるウォーターするとくりかえす。
うまくねー。
来ているとF島さんから聞いていたS田さんとも出会う。波乗りについてアドバイスをいくつかもらうが、これができないんだなー。
とにかく高さが稼げないのが痛い。もっと自由に海面を動きまわれないと。
風になぶられる頭が気化熱の影響で冷えてしまって肩がこってくる。
ぼんやりと海を見ていた。
やたらシャープな動きのセイラーがいた。浅野プロに似ていたが、Jナンバーをつけてなかったので判断にこまる。似た顔立ちの五十代ぐらいの他のセイラーと楽しそうに乗っている。こちらもやたらとうまい。膝上ぐらいの波にリップをかけて板をスラッシュさせている――もしかしたら浅野親子か?
浅野プロは、波なんかどこにもないじゃん、というところから下らせてランダムにあらわれた波にボトムターンしてカットバックしている。
そして、他のプロも同様に延々、乗っている。
一往復してビーチで休む自分が情けなくもあり、プロの体力にも驚嘆。それとも彼らは人見知りが激しくてビーチに上がりたくないのか?
F島さんがゲッティングアウトしていくのを見た。
波越えしてゆき、ジャンプ!
ノーズが天を指す。
そして、インサイドに戻ってきた。波はほとんどない。フロントにふる。カットバック。フロントにふる。カットバック。フロントにふる。カットバック。がんがん下ってしまっている。そのまま、遠くへF島さんは消えてしまった……。
夕方になって満ち潮になったせいか、波のサイズがあがってきた。とくに河口のあたり。そこにわらわらとセイラーが集まる。うまい人は波を求めて。へたな人はたんに流されて。
体力はまだ残っている感じだったけれど、うまくセイリングできないので気合いがない。ぼくは四時に上がる。F島さんは腹一杯、乗ったと恍惚モードにはいっている。ぼくはへこみまくりだ。
F島さん、S田さんと食事して帰路。ぼくは三浦の事務所へ向かう。夜の十一時をまわったところで到着した。
結局、今日、ぼくは 500 キロ近く、車で移動したことになる。
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Takehiro Yamada