伊豆合宿II (ウエイブコンディション)
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2001 年 10 月 07 日(日)
伊豆白浜
曇り
Sail:CORE 5.3(NEIL PRYDE)->COMMBAT 4.2(NEIL PRYDE)Board:WAVE265(MISTRAL)
筋肉痛に身動きできず、布団にくるまっていたらY社の人たちの声が廊下の方から聞こえてきた。
「吹いてるよー」
「沖に風、はいってんじゃん」
「ウェイブウェイブ」
またまたまた、嘘ばっかり――予想天気図では吹くと思えなかったのだ。![]()
朝食をとってふと外を見ると、沖合いの海面がまっくろだった。
――吹いている。
まいったな。
ウェイブをやりたいという気分ではなかった。
今年はあきるほど本栖湖で乗ることができなかったためか、まだスラロームに飢えていた。どん吹きで暴走寸前でかっ飛び、そのまま、がん、とジャイブにはいるスラローム独特のあの感じ。それが本栖湖のように平水面なら最高だ。今年はジャイブの確率が飛躍的に上がったこともある。まだ、スラロームが楽しかった。
それなのに伊豆白浜はウェイブコンディションだった。
有料駐車場に車をいれ、呆然と海を眺める。左からのサイドオンというところ――波は全然、風がないときとはちがってやはりぐしゃっている。ぼくはどちらかというと、御前崎菊川とあまり印象はかわない。Tは、いい、いい、と興奮していたが。
Y社のO滝さんに白浜で乗るときの注意を受ける。
左の海面で乗ること。白浜は右が岩壁になっている。そこに流されたら死ぬという。たしかに岩壁に打ちつける波は白くたぎっている。岩壁の影響で風がねじれ、はまると一気に流されてしまうらしい。
白浜をちょうど半分に左はウィンド、右はサーフィンという感じの住み分けのようだ。
セッティングするセイルサイズには迷った。おそらく 4.5 前後のようなのだが、そのサイズのセイルは夏に菊川で破ったばかりだ。ひとつ上は 5.3、下は 4.2 になる。ボードは浮力があるので 4.2 かな、と思ったのだが、ビーチから出艇していく知らないセイラーの動きを見て気がかわった――インサイドは風が足りなそうだったのだ。
アンダーセイルでは流されてしまうが、オーバーならなんとかなる、ということは経験からわかっている。
人よりひとまわり大きいセイルとボードを組み上げる。
Sさん、Tはジャストと思える 4.7 をセット。N沼さんは 4.5 だったようだ。O田くんは残念だが、ギャラリーということに。
合宿参加メンバーの半分は外浦へ。Y社のHHコンビが白浜の駐車場でうろついている。恍惚と驚きのまじった笑みを浮かべて海を見ている。ちょっと羨望もまじっていた。しばらくすると外浦へ移動したようだ。
左の小川のあたりから出艇しようとしたところ、N沼さんにもっと左へ行くようにアドバイスを受ける。それにしたがってさらに左から――あまり左にいくと、岬のブランケットになるので風のはいりが悪そうだ――出る。二度、失敗した。三度目でゲッティングに成功。アウトにでた。
瞬間。
ど、ど、ど、どオーバー。
板はオーバーボリュームで狂ったように暴れる。
うひゃーうひゃーうひゃー。
沈してインへ戻る道行。さらに板は暴れまくる。はねあがるボードに視界の下半分が一瞬、隠れるほどだ。
セイルチェンジするしか、ねー。
インサイドの波にあわせる。バックサイドライド。スープにあてこんで板を二度ほど返した。いやぁ、おもしろい。
出艇したばかりだというのに、ビーチにあがってひと休み。
セイルを換えようともせず、Y社の人たちのライディングを見学した。カメラマンがいるのでジャンプセッションをしようとか、いっている。まずO滝さんが出ていった。あるていど出ていったところで片手を上げてジャンプすると合図した。目の前には掘れはじめるうねり。駆け上ぼった。ジャン……プ?
O滝さんは波の頂点から向こう側へ落ちていった。Y社の人たちとぼくは笑い転げた。
でも一日の終りにカメラマンはO滝さんのジャンプが一番よかった、という。人の目の前で意識して技をやるのはやはりむずかしい。
ぼくはちょっと思いついてジョイントの位置を変更してみた。ひと拳分前へ。それでずいぶんボードの暴れが抑えられるようになった。
海ではローカルなのか、びしばしとフロントのリッピングをきめている。菊川よりもうまい人の密度が高い。ただ、見ているだけであきない。ときおりフォワードループやバックループ、テーブルトップジャンプも見た。
Tが戻ってきてフロントにふるということがわかった!と嬉しそうな顔をしている。そこから板を返せないけど、とも。
Sさんはゲッティングアウトに手間どっている。左サイドのゲッティングアウトは初体験だからだろう。ベアがうまくできない、と嘆いている。が、めげもせず、ゲッティングアウトにチャレンジしている。けっこう自分にむかついているようだった。
ぼくは一往復してはビーチにあがって休むということをくり返した。
インサイドに戻ってくるときはバックサイドで波に乗せたり、スープにあてこんだりして楽しむ。一度、脛ぐらいの波にバックサイドで板を返したとき、そのまま、空中に飛びだし、再び、波に戻って乗った。おおっ。これってエアボーン?空中で身体がねじれた感じがエアボーンっぽかったとような気がする。
昼休みをとるタイミングでセイルサイズを落とす。4.2 へ。
駐車場で自分の車に戻る途中、N沼さんにいきなり聞かれた。
「山田さん、何度、結婚したの?」
「一度だけです」
――いやぁ、あんなのは一生のうち一度だけで十分でじゅうぶんではないだろうか?
午後。
風はオンにふれてきた。サイドオンからクロスの中間ぐらい。気温が上がってきたためらしい。波は満ち期になったためか、サイズアップしてきた。白浜の中央の波がサイズ、質ともよさそうだ。サーファーが集まってきてる。さすがにあの中に行くのはまずいだろうな。
出艇。さすがにセイルサイズを落としたので楽になる。
N沼さんが貸してくれというので貸す。けっこう板が跳ねているように見えたのだが、乗りやすいねー、とのこと。セイルは以前、借りたときのやつがよかったね、という。それは午前中に張っていた 5.3 です。
Sさんは午前中で疲れきったのか、車で寝ている。
風は吹いているのにどこかのんびりとした気分でウィンドをつづける。
ふとビーチで休んでいると、ビーチ際で何かの撮影がはじまる。水着姿の女優が波打ち際から腰をふりながら歩いてきて立ち止まるや、カメラ目線でしなをつくって髪をかきあげてニカッと笑う――というシークエンスを数度くりかえす。助監督らしい男が演技指導をしたりしていた。
ぼくら五、六人はそれが終るまでウィンドのことをすっかり忘れてしまった。
ぼくは思わず、つぶやいた。
「白浜っていいですねぇ」
情報によるとそのあとこの撮影隊は外浦にあらわれたらしい。女優はヌードになったというがこちらはどうもデマくさい。
撮影も終ったことだし、再出艇する。
ゲティングアウトできたのはいいが、沖合いで風が抜けて沈した。
風下を見ると思ったより岩壁が近いような気がしてプレッシャーを感じる。じたばたしながらウォータースタートしたが、風が足りなくてうねりに翻弄されてしまう。少し下りぎみのラインでビーチを目指す。まずいなー、プレーニングしてないから上りがとれない。やばいなー。とにかくビーチへと向かう。なまじ、沖に出直してはまって岩壁行きだけは勘弁してもらいたい。
白浜の中央あたりを通ることになってしまった。![]()
ふと見ると、岸からうじゃうじゃと鰐の集団がやってくる――と思ったらサーファーがパドリングしてやってくるのだった。あっという間にぼくの進行方向までやってきた。前を塞がれた。風は足りない。サーファーたちの動き――ドルフィンスルーをしはじめたのだ――でうしろから波がきているのがわかった。やばい。ここで巻かれたらサーファーに怪我をさせてしまう。そのとき、あたりのサーファーからブーイングが起きた。邪魔だーっ、というわけだ。あっいう間にブーイングの合唱になる。
ひーっ。こえーよー。
いずれにしても活路は一箇所しか見当たらなかった。目の前のサーファーのうしろのサーファーのさらにうしろになんとか、間が少し空いている。そこしか道はなかった。波に乗った瞬間、ちょいと下らせてそこを抜けた。
「すいませーん!」
ひたすら低姿勢だ。
彼らにしてみれば、自由に動けるのはこちらに思えるだろうが、風がないときのウィンドはサーフィンよりも動けない。
波に乗ったせいでプレーニングした。いい波だ。あっという間にサーファーの集団から離れた。それでもこちらに腕をふりあげ、ブーイングはつづいていた。
いやぁ、悪かった――そうは思うもののスラム街でチンピラの群れの中を通過したような気分になる。
フロントにふる練習をしているTの影響で二度ほどフロントをチャレンジしてみた。肩ぐらいの波でトップからボトムにまっすぐ落とす。このとき、左側の波をちらりと見るのだが、波が垂直に掘れているように感じられる――ので、かなりびびる。
どうやら菊川はフロント方向へ逃げるような波だが、白波は向かってくるような波らしい。リッピングをするにはやりやすい波かもしれない。
気合い一発。フロントのボトムター……ン?
セイルのクリューが海面にくわれて失速して沈。
はっ、と波の方を見ると崩れてきていた。
そのまま、容赦なく波に巻かれてしまう。洗濯機状態。波打ち際近くまでもっていかれる。すぐに道具をとチェックした。だいじょうぶ……ではなかった。なんかセイルが変。よくよく見てみると、ブームの長さが左右でちがっている。ストッパーが緩んだのか、片方が短かくなってしまっていた。そのため、全体として微妙にねじれているような感じになっているのだ。まいった。なぜか、その状態で固定され、きちんとした位置に戻せない。しばらく格闘してなんとか、元に戻す。
いずれにしもてセイルの倒しすぎでクリューが海面にくわれるのは、あきらかに上体だけターンしようとしているからだろう。下半身が引けてしまっているのだ。
いかんなぁ。
再び、海へ出る。
風はガスティになってきている。
沖で沈したのを機に方向転換してインサイドへ向かう。
上り気味のライン。斜め前の波を追いながらあわせて波に乗って加速感を楽しむ。バックサイドで波のトップへ切れ上がって板を返す。そのまま、ボトムへ――いつものようにジャイブなどせず、ビーチにまっすぐ向かう。楽するためにハーネスをかけた。その瞬間だった。ぱきっ、と両手の間でブームが乾いた音をたてた。
折れた!
しかし、そのまま、無事にビーチまでセイリングできた。![]()
ひきつった笑いを浮かべながらビーチにいたN沼さんたちに申告。ブームが折れた、と。N沼さんたちは何をいっているのか、理解できない、という顔をしている。ちゃんとセイリングして帰ってきたじゃないか。
道具を波打ち際にあげ、音がしたあたりのブームをねじってみた。思わず笑ってしまうほどあっさりとねじれた。ブームラバーだけでつながっている状態だったのだ。
N沼さんたちにそれを見せると驚かれた。
カーボンブームでも折れるんだー、と。
アウトでなくてよかったねー、ともいわれる。
まったくだ。
波で巻かれたときのことは予兆だったにちがいなかった。
換えのブームのないことだし、今日のセイリングは終り。
ブームをデジカメに持ち換えて撮影をしばしば。
風も落ち、駐車場の時間もあって(五時)やがてすべては終る。
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Takehiro Yamada