
ウェイブ・コンディション in 三浦菊名海岸
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2001 年 09 月 08 日(土)
三浦菊名海岸
晴れのち、曇りのち、雨
Sail:CORE 5.7(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)
朝、起きたら大森のカプセルホテルにいた。
昨日、品川で飲んで最終を逃してしまったのである。品川にもカプセルホテルがあると思ったのが、まちがいだった。それでしかたなく、タクシーの運ちゃんに聞いた大森のカプセルホテルに一泊したわけだ。
いっしょに一泊したSさんはすでに三浦へ行ってしまっている。
ぼくは三年前まで住んでいたこの街に目を細めながら――ということなどまったくなく、駅へ向かう。
風はない。
おやおや、である。
今日は北東10メートル。三浦かっ飛び、と昨晩の飲み会で流言飛語だったのだ。
それなら行く価値あり、じゃないか。
今週末は海の予定はまったくなかったが――今年から九月は競馬の月と決めている――、行ってもいいな、と思っていたのだが。
時々、ブローで街路樹が揺れたりしている。
吹きそうな予感がした。
自宅へ戻って16号バイパスの南下している途中で携帯電話を忘れたことに気づいたが、そのまま、三浦へ。海岸沿いの道路にでたとき、風があるように見えなかった。しかし、よくよく沖合いを見るとけっこう、風がはいっている。
津久井浜ではがんがんに――インサイドは止まっているが――ウィンドが走っている。今日、津久井浜で行なわれているスラロームクリニックにはTやSさん、F山くんなどが参加しているはずだった。
津久井浜の歩道をひとり歩いているTを見かけた。
クラクションを鳴らす。
こちらに気づいた。
にやりと笑ってぼくは一路、菊名海岸へ。
風に昨日のアルコールが抜けていく。
頭の中では今日、ひっぱりだす道具のことをいろいろと考えていた。バーレープロトに 7.5 の V8 か――それとも DROPS 9'6" をだすか。菊名海岸から津久井浜まで行くつもりだったからバーレープロトかな、やはり。スケグはどうする? 52cm は長くないか? 7.5 にはやはり、40cm が合うのではないか……などなど。
マクドナルド前の五叉路を抜けたとき、見たことのない光景があらわれた。
オーバーヘッドの波がわれていた。
呆然としたのは一瞬だった。
思わず奇声が出た。
「うひょっひょおおおおおおおっ」
菊名海岸の沖ノ島とビーチにあらわれている暗礁との間の海面でヘッドからオーバーヘッドの波がたち、われているのだ。それもかなりきれいなわれ方をしていた。いわゆるポイントブレイクというやつ?
波の乗ったウィンドがフロントにふっていた。左からのサイドショアなのでスタボーでのターンだ。
しかし、思ったより風はない。
いつになく菊名海岸には人が集まっていた。
駐車場の空きがない。ないない、とどんどん、風下にいってしまったが、なんとか、空きを発見する。恍惚の表情でしばし波を見ていた。われているのは沖ノ島の陸よりの海面だけだ。波が入ってくる間隔は長い。五分から十分に一回という感じだ。しかし、入れば、波が三つくらいつづくし、そこでわれるときはサイズは最低でもショルダーはある。
車に戻ってウェイブの板をだそうとしていると、隣にハイエースがはいってきた。
運転席に見たような顔。しかも昨日の飲み会で見た――S川さんだった。一瞬、お互いにきょとんとしたあと、えらい偶然やねー、と大笑いした。
セッティング。最大のウェイブセイルをひっぱりだす。5.7。ひさしぶりなのでもたつく。たしか前回は 5.7 をつかったはずなのでハーネスなんかはそのままでいいはずだ。
S川さんは 6.2。ニールプライドのNRだ。ボードはぼくと同じミストラルのWAVE265だった。
そこへウェットスーツ姿のS田さんがあらわれた。
笑いが思わずこぼれる。S田さんも昨日の飲み会にいたのだ。しかも主賓として。テーマのひとつがS田さんの結婚祝いだったのである。
二度、スープにつかまり、三度目にどうにか、ゲッティングアウト。失敗している間に少し風下に流されてしまった。乗ってみて気づいた。ブームが高すぎるじゃないか。ハーネスの位置が変じゃないか。風、ないじゃないか。
上りをとりながらよたよたと沖ノ島よりも沖へでる。
ブローで数度、プレーニングしたが、概ねよたよたとしていた。
二往復してどうにか、沖ノ島近くまで到達することができた。うねりを待つ。前方でも数人、波待ちをしている。
――きた。
下におとしぎみにしてうねりにあわせる。進行方向に暗礁。ちょっとビビる。波に乗ってあそこに突込んだらシャレにならんな。うねりが張ってきた。パンピング。だめだ。置いていかれた。次がきた。パンピング。あかーん。また、置いていかれた。
むずかしい。
ジャイブして沖へでて再び、波待ち。
こいこいこいっ、と視線を風上に向けていた。
きた。
一発目はまた、置いていかれた。
次こそは。
パンピング。乗れるか。乗れるか。乗れ。乗れ。乗れ。ちらりと足元を見ると、板の下に水がなかった。恐い――と思った瞬間、波のフェイスを滑りおりはじめていた。と、と、とにかくフットストラップに足をいれる。
うひゃひゃひゃひゃひゃーっ。
どうしようどうしようどうしよう。
えーい。フロントじゃ。
なんだかわけがわからないうちに左手に崩れはじめる波が見えた。板を返した。ボトムに向く。よし。
――え?
あれ。
あれれ。
また、波に置いていかれてしまった。
あかんがな。
ビーチにあがって水分の補給。
津久井浜にはけっこう風があるのか、ウィンドのセイルが左右にいったりきたりしている。きっとスラロームクリニックは盛況だろう。
そういえば、昨日、フットストラップを前寄りにすると、フロントにいきやすくなる、といわれたな――そう思ってビーチの自分の板にかがみこんだ。んー、ボトムに傷がある。いつやったんだろう。ちょっとめげながら表にかえしてフットストラップの位置をチェックした。もうひとつ前にすれば、いいのかな……って、あれ、後ろのフットストラップが斜めになっている。
うわぁ、おれって馬鹿か――ずっと御前崎菊川で乗っていたとき、まったく気づかなかった。今になって気づくかね。セイルを見てなんとなくあたりを見回したら、ぼくのと同じ板がそばに置かれていた。
セイルもそっくりだ。
――ってそっちがぼくのじゃん。
ぼくがいっしょうけんめいチェックしていたのはS川さんのボードだった。
雨が降りはじめたが、S川さんが再出艇。
それにぼくもつづいた。
風は少し、オンにふれている。
沈がおまけになったタックをくりかえして再び、なんとか、沖ノ島のそばにたどりつく。さっきと同じように波がくるのを待って必死にパンピングするが、うまく波に乗れない――そのまま、ビーチ近くまで。
面倒だ。あがっちまおう、と思ったとき、うしろからスープが迫ってくるの気づいた。足をジョイントよりも前に置いてそれにそなえたのが失敗だった。スープに巻かれたとたん、足をボードとマストにはさんでしまった。うぎゃっ。ボードとマストとの間に足をはさんで骨を折った人の話が頭の中を駆け巡った。
ビーチにあがってチェックしてみる。痛みはあるが、全然、だいじょうぶのようだった。皮がすこしめくれたくらいだ。
なんとなくそれで戦意を喪失してしまったのかもしれない。
ビーチに腕組みして他の人たちのセイリングを眺める。
ひとりめっちゃくちゃ目立っている人がいる――風はそんなにないのに、バルカンをがんがんやっている。すげー、と思っていたら目の前で波に乗っている途中にバルカンをきめた。
うまい人はうまいんだなー。
沖の方からS川さんが走ってきた。
盛り上がるうねりにタイミングがシンクロした。波に乗る。ボトムへ滑りおりてボトムターン。そして、波のトップで板を返した。うまい。そのまま、ボトムへおりてボトムターンをして二発目。リッピング。崩れる波とともにボトムへ――ローラーコースター。
知っている人がアップスンダウンするのを見たのははじめてかもしれない。
うまいなー。
あんな風に動けるようになるのに何年、かかるんだろ、おれ。
S川さんとは同い歳なのに。
そのまま、ビーチにあがってくるのか、と思ったらジャイブしてアウトへいってしまった。うぬー。体力がちがう。
栄養を補給しようと車に向かっていると、着替えたS田さんと会った。
意外。聞いてみると、暗礁でボードを傷つけてしまったのだという。ゲームオーバーだそうだ。
ぼくはコンビニエンスストアまでキックボード。
津久井浜には風ががんがんにはいっていてスラロームがかっ飛んでいるのが見える。菊名海岸から少しマクドナルド寄りにいくと、やはり風がはいっている。
不思議に思って菊名海岸の方をふりかえるとそこだけ風がない。
つくづく菊名海岸のインサイドは風の入りが悪いのだ、ということを知る。
驟雨が降り、風も落ちた。
波の間隔も長くなってしまった。二十分に一度という感じだ。終ったな、とぼくが道具を片付けて海を見ると、S川さんが海にでていくところだった。
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Takehiro Yamada