本栖湖三連発(キックジャンプ)




2001 年 07 月 22 日(日)
本栖湖FANビーチ
晴れ
Sail:V8 7.5(NEIL PRYDE)(NEIL PRYDE) Board:DROPS 9'6"



 bjork の歌声が頭の中で鳴り響いていた。
 いつからなのかはわからない。気づいたのは本栖湖キャンプ場の流し場で皿を洗っているときだった。
 「Army of me」だろうか。
 本栖湖に三日目。さすがに疲れたということだろう。
 木陰のサマーチェアに腰をおろし、ぼんやりと夏の光に輝いている本栖湖を眺めて時を過した。パソコンに叩きこんである bjork の mp3 を聞く。
 まだ、午前中ということもあって風はなかなか上らなかった。
 ニューカマーのM上くんとO田くんは練習にいそしんでいる。
 昼をまわってからTが出艇した。その姿をぼくが彼のデジカメで撮影する――十枚近く。動画も撮影した。最大十五秒だが、ジャイブシークエンスを撮るには十分な長さだった。そのあと、再び、木陰に戻ってぼくはぼんやりとした。
 二時に昼食という話だったが、だれも戻ってこない。
 ニューカマー二名ほか、Tが戻ってきた――しかたないので、ぼくが焼きそばをつくる。思いっきり適当に。
 湖の方を見ると、T嶋さんとI村さんのセイルが戻ってきているところだった。
 双眼鏡でその様子を見た。
 T嶋さんは横幅 70 cm ぐらいのワイデスト・スラローム。I村さんは DROPS J1 ――横幅は 80 cm をこえるぐらいか。レーシングボードだ。
 I村さんはあきれるぐらいの上り角度だった。T嶋さんとは二十度近く、ちがっているように見える。うなってしまった。あまりにも上り角度がちがいすぎる。あれではスラロームでレーシングにアップウィンドレースで、かなうわけがない。


 風はガスティで、やや弱いが、一応ということでぼくも出艇することにした。
 ブローはそれなりにきつく、プレーニングするぐらいの風だ。
 二日前に会得したジャイブをくりかえす。なかなか好調だ――ふいにキックジャンプをする気になって、やった。たぶん水面が荒れていてタイミングをあわせれば、けっこう飛び出せるのではないか、と思ったからだろう。
 だめ。
 スケグが水中から抜けきったことすらあやしい。
 スピードをだしすぎていた。ちょっと減速してすぐにもう一度。
 飛んだ。さっきよりはましだ。でもそれだけ。
 着水と同時にもう一度チャレンジした。
 えっ? と思った。
 ふわりと浮き上がったのだ。
 おりゃあっ、もう一発――と調子にのってもう一度、キックジャンプした。やらなければ、よかった。着水のとき、ノーズが水面に張りついてしまったのだ。前転して激沈する。
 沈のしかたがちょっとばかりエグかったので、こわくなった。キックジャンプは遠慮して普通のセイリングとジャイブにいそしむ。
 再出艇したI村さんはほとんどつねにプレーニングしている。ボードをしごきだすパンピングも見せてもらった。さすがにうまい。
 走っているうちに我慢できなくなった。
 ぼくはまた、キックジャンプに挑戦した。
 さきほどの、あのふわりと浮き上がった感覚が忘れがたかったのだ。四連発した。一発目、あんまり飛ばず。二発目、同じく。三発目――。
 ふわりと飛び上がった。
 なんでいつも三発目なんだ、と思った瞬間、調子に乗って四発目をやっていた。馬鹿だ。まったく前回と同じ状況――ノーズを水面に張りつけて激沈。
 セイルの上に大の字になってしばらく動けなかった。
 死んだぁ〜っ、と笑う。
 おそらく――把握した。キックジャンプでの飛び上がり方を。スタボー限定だけれども。感覚はわかったような気がする――。
 後ろ足の蹴り方がちがっていた。
 ずっとかんちがいしていた。強く蹴りこめば、高く飛べると思っていた。そうではなかった――「強く」ではなく「軽く」だった。「鋭く」ともいえるかもしれない。蹴りこむのではなく、ボクシングのジャブのように鋭く蹴る。それがコツのようだ。
 確認した。
 ふわりと飛び上がった――。


 風は徐々に落ちていった。
 疲れた。帰ろうとキャンプ場前のビーチへと上っている途中で沈したので、ボードの上に腰をおろして十分ぐらい、休んだ。風下の方ではTがプレーニングしている。他のセイラーよりも五割増しのプレーニング率だった。
 でもTのセイルのシェアーチップがなんか変なぐあいだ。
 一気に下っていってTのそばまで行ってみる。FANビーチのあたりで、Tは沈していた。ウォータースタートしようとしている。シェアーチップがシェアーチップではなくなっていた――セイルのトップがぺこりと折れ曲がってしまっている。
「Tぁっ、シェアーチップが壊れているぞおっ」
 声をかけると、Tはセイルのトップを見た。
 ちょっと顔をひきつらせると、Tはそのまま、プレーニングしてキャンプ場前のビーチまであっという間に戻ってしまった。
 ぼく、ひとりを残して……。
 ひー。


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Takehiro Yamada