JCBA EAST SLALOM & MID RACING 第2戦




2001 年 06 月 09 日(土)
本栖湖FANビーチ
曇りのち晴れ
Sail:RX1 8.4(NEIL PRYDE)->V8 7.5(NEIL PRYDE) Board:DROPS 9'6"



 前兆はあった、というべきかもしれない。
 セッティングした RX1 のセイルのメインパネルに 10 センチほどの裂目を発見したのだ。「JCBA EAST SLALOM 第2戦」のレースの準備をしている最中のことだった。リペアテープで応急処置をしたけれども、気分が落ちこむこと、はなはだしい。
 岩橋プロからレースの説明があったあと、風待ちにはいる。
 コースは上下のマーク二個を一周。ゴールはオリンピックトライアングルコースのサイドマークがちょうど逆側の位置のマークと岸にあるフラッグの線上。スタートラインは下マークと本部艇の間で、下マークは去年まであった競艇練習場の桟橋あたりになる。上って下ってゴールまで上るというコースだ。
 風が吹きはじめた。
 何人かが出艇する。まだまだ、プレーニングしなさそうな風なのにフォーミュラのボードとビッグセイルの組み合わせではプレーニングしている。
 やがて第1Rの告知がされた。


 スタートラインへ向かう。
 風はぼくにとっては足りない。アウトをゆるめて微風セッティングにしているけれども、プレーニングするか、微妙なところだ。スタートラインにはロングボード、フォーミュラボード、スラロームボードとがいりみだれている状態。T田さん、N沼さん、T嶋さんなどは当然のようにロングボードをつかっている。I田さんはスラローム、T、Sさんはフォーミュラボードの前身であるフラッパー系のボード。
 とてもではないが、スタートラインに停止しているなんて真似はできない。
 ふと見ると、十人ぐらいがスタートラインそばの波打ち際に立ってスタートを待っている。おっ、あれはいい手じゃん。海上スタートをビーチスタートにするわけか、と思ってさっそく、その仲間にぼくも入る。ところがスタート1分前にほとんどがスタートラインへ向かう。波打ち際は本部艇側に位置しているため、セイラーがわんさかと溜ってしまっている。とてもじゃないが、ビーチスタートしてその間を抜けてスタートラインを切るのは不可能なようだ。
 あきらめた。
 ぼくもスタートラインへ向かう。
 途中、ロングボードに殺されてしまったらしいI田さんがポートで上ってきているのにすれちがった。スタートラインに並ぼうとしたところで、並んでいたセイルが動きだした。スタート。あっという間にスタートしたセイルのブランケットにはいってしまい、動けなくなってしまった。
 ずりずりと上ろうとしたが、アウターマークはすぐそこにあった。風を求めて風上を見た。Tがいた。その上にSさんがハーフプレーニングしている。ぼくはなんとかアウターマークをクリア――そのまま、スタボーで走りつづけるが、全然、プレーニングしない。スタートラインをふりかえると、セイルアップしているセイラーの姿が見えた。まだ、うしろがいるということで少し安心した。たったひとりだけど。
 スタートでセイルを落としてしまったのだろう。
 しばらく走って、タックした。ポートで走ったが、だめだ。上れない。スタートでつまづいたセイラーがスタボーで上ってくる。がーん。ロングボードだ。かわされるのは必至。よく見ると、知っている人だった。YRNのH野さん。スタボー優先なのでどうしようもなく、ぼくはちょっと下に下らせてクロス。それから上らせようとしたが、やはり風がなくてだめ――しかも風向きが振れているようだ。どんどん、下っていく。進行方向に本部艇が見えた。スタートラインに戻ってどうするんだ、山田。
 風がまた振れたのか、どうにか上りだしたが、今度はゴールのマークが見えた。
 そのあたりには運営の人が集まっている。
 あれを回航したらきっと一着になっちゃうだろうなぁ、と馬鹿のことを考えたが、そんなことはせずに手前でタック。スタボーで上を目指す。途中でうしろを見たらすでにコースを一周したセイラーがゴールしていた。
 何度もタックをして上マークを目指しているうちに湖面にはだれもいなくなってしまった。ゴールした人がひとりかふたり、練習でか、セイリングしているぐらいだ。本栖湖を独占しているのは気持ちいいが、すんげー恥かしい。上マークのアプローチを失敗してよぶんにタックをうったれども、なんとか上マークを回航。
 タイムアウトって何分だっけ?
 とにかくスタートラインに人が集まりだしたらタイムアウトだろう、と思って下マークを目指す。プレーニングしたので一気に下っていく。クォーターよりも深く下れたようなので自分でも驚く。ボードの上にはほとんど身体が立った状態だ。セイルは自分にふれるぐらい引きこんでいる。すごい。自分に感心する。こんな角度でこんなフォームで走れるもんなんだ、へー。
 カニンガムを使っているTやSさんがこのくらいの角度で下っているのを何度も見たことがあるが、なんだ、カニンガムを使わなくてもできるんだ。やれば、できるんだ。
 風がなくなってきた。
 ノーズがあがりそうになるのを前に体重をかけておさえたけれども、ブローが終りに近づいてきたのがわかる。プレーニングがとまったらぽんとセイルのクリューから風がはいるのはまちがいない。
 ど、ど、ど、どうすりゃいいんだ。
 まったく経験したがない状況にパニックになる。とにかくプレーニングがとまったらセイルを開くしかない、と思った瞬間、プレーニングがとまった。
 ぽん、と風がはいった。
 いきなりクリューファーストのライディングになったようなものだ。
 そのまま、セイルにふりまわされて沈。セイルアップに失敗してもう一度、沈。みじめー、と思いながらボードの上に身体を引き上げたらビーチからスタートラインに向かうセイルが何枚も見えた。
 終わった。
 しくしく。
 ビーチに戻る。
 I田さんとTがいたので聞いてみると、タイムアウトは一着艇ゴール後、三十分のはずだ、という。まだ、時間はある、という。しかし、さすがにもう一度、下マークを目指す気力はなく、座りこんだ。風邪で体調不良のTもちゃんとゴールしたというのに、おりゃ、何やってんだ、まったく。
 SさんはTに先行してゴールしたという。


 第2R。
 スタートライン近くのビーチまで波打ち際――本栖湖に波はほとんどないけれども――をTと歩いていく。Tは体調不良でかなりきつそうだ。目的地にたどりつく前に1分前になってしまった。あわててセイリングして本部艇へ向かう。風が上げってきているようなのでセイルのセッティングは普段に戻してある。
 スタート。
 二、三艇残っているボードとともに本部艇の下を抜ける。
 上ろう上ろうとしているのに、目の前にはアウターマークが。なんとかぎりぎりでかわして走りつづける。第1Rの経験でとにかく風のあるエリアまで上るしかない、とタックしたいのを我慢して走る。風にとどいた。タック。ポートで走る。よし。プレーニングするぞ。FANビーチのそばでタック。M木さんが岸に立っていた。失敗せずにタックできたのでほっとする。だって沈したらかっこ悪いじゃん。タックする姿そのものがかっこ悪いのはしかたがないとしても。
 スタボー・セイリング。
 目の前をロングボード軍団が放射状に拡がって下ってくる。ミサイルが次々に落ちてくるシーンを思い出した。N沼さん、T嶋さんと見かける。パンピングしている。
「うひゃあっ」
 あきれて思わず、声を上げる。
 その声を追いかけてくる後続艇だと思ったのか、N沼さんがきびしい顔で一瞬、ふりかえった。
 中途半端な位置ではタックすることもできず、スタボーで奥まで突込んでタック。ポート・セイリング。上にI田さん、Sさんのセイルを見つける。タックして上マークへアプローチしてみたが、たりない。もう一度やり直し。また失敗するのはいやだからとにかくポートで岸ぎりぎりまで突っ込む。
 なんとか上マークをクリアして下り。ちょうどきていたブローをつかみ、プレーニングして第1Rと同じぐらいの深さで一気に下る。かなり下にI田さんのセイル、Sさんはその手前のかなり右にいったところにいる。ふたりとも風がないのか、プレーニングしていないし、ぼくの方が深い角度だ。かわせる。そう確信してブローの中、下る。
 第1Rと同じく風がなくなってくる。なくなった。ふらふらしながらもなんとか沈せずに下マークにアプローチできるあたりまで行ったところで、ジャイブ。ここで沈したら最後だ。位置的にはSさんはまちがいなく、I田さんもたぶんかわせているはずだ。
 ジャイブ成功。ポートの下り。ちょうどブローがはいった。プレーニングしてアプローチ。クォーターぐらい。下マークを回航。ゴールへの上り。だめだ。一本では上り切れない――フォーミュラボードはクリアしているようなのに。岸近くでタック。I田さんが下マークを回ってくるのが見えた。逃げ切れるか、と思いはしたが、楽勝だと思っていた。
 ゴールマークにアプローチするため、スタボーからポートにタックしたとき、I田さんがスタボーでぐんぐん上ってきた。ぼくのアプローチは失敗。全然、ゴールに届かない。それどころか、I田さんとミートしてしまった。
 負けた!
 にこにこと笑うI田さん。
 すれちがう。
 くそぉ。
 二回、タックをいれてしまったぼくとはちがってI田さんはきちんと次のタックでゴールし、ぼくはそれに遅れてゴールした。
 三十七着。
 ここだけの話だが、実はアップウィンドのレースでゴールしたのははじめてだ。情けない話だけれども。


 第3R。
 風は第2Rのときよりもある。
 そのせいか、ロングボードからフラッパー系の板に乗り換えている人がいる。
 スタートは前回と同じく、遅れて本部艇のけつをなめるようにしてスタート。今回もアウターマークにひっかかりそうになりながらなんとかスタートラインを横切る――レースが終ったあと、閉会式のとき、トップの選手が今回のレースのことを講評してくれたが、かなり下有利だったとのこと。ぼくがへたなだけではなく、それも関係していたのだろうな。こんなにアウターマークに御対面してしまうのは。
 アウターをクリアしてちょいと下らせたらプレーニングした。
 よっしゃ。気合いをいれてきりきりと自分としては限界いっぱい上っていく。どうやらブローが広がるように吹くためだろう。レース海面の端の方が上り角度がいい。なまじ振れタックなんかしない方がいいようだ。そうやってスタボーで上っていっていたら前方にセイルアップしているT嶋さんがいた。なんか失敗したらしい。ボードはスラローム系のものだ。驚きながら、上側を走り抜ける。どうせ抜かれるよなぁ、と思っていたら案の定、次のスタボーの走りのときには先行されていた。
 あっ。
 今、書いていて思ったのだが、どうしてT嶋さんをマークしなかったんだろう。そうすりゃ、引っぱられてもっと前にいけたかもしれないのに。
 馬鹿。
 上マーク近くまできたときには、ふるいにおとされたようにT、Sさん、ぼくがいた。ほんのわずか、Sさんよりもぼくが先行している。Tはさらにその先だ。なのにお約束のようにぼくはアプローチミス。余分にタックを打つ。Sさんに先行を許す。
 下りでかわしちゃる、と思ったのに、今まであった風がなくなってしまった。
 上マークを回航したが、プレーニングしない。ふらふらとバランスをとりながら下っていく。Sさんは下らせるのに苦労している。ブローがはいるたびにラフしてしまっている。ぼくもこの状態でブローがはいったらやばいな、と頭の片隅で考えていた。
 ちらちらと風上側を見てブローに注意していたのに、バランスをくずしてセイルごと前に倒れてしまった。普段ならブームに腕立伏せのかっこうでセイルの上に落ちないようにするのだが、身体がのびきった状態だったのでセイルの上に倒れてしまう。しかも肘をついた。ずぶりとセイルに肘が沈みこんだ。
 ぱりっ、というセイルの破れる音も聞こえた。
 すぐにセイルを調べてみると、破れているのはメインパネルだ――なるほど、と思う。前兆はあったわけだ。


 終わった。
 終わっちまった。
 ぼくの第3Rは終了してしまった。
 メインパネルだけだったのでもしかしたらゴールまで走れるかもしれない、とも考えた。でも第4Rはどうする?
 今すぐ岸に上がれば、V8の 7.5 を張り直せるだろう(マストとブームは共用なのだ)。
 というわけで第3Rをリタイヤして岸へ向かう。けっこう走る。これならゴールぐらいはできたかも、とちょっと後悔する。
 岸に道具を上げてゴールを見ると、I田さんがゴールするところとだった。
 ビーチサンダルを履きにゴールの方へ歩いていく間に、Tもゴールした。Sさんは風下のビーチにいた。
 ゴール付近で見学しているK藤さんとM木さんがそれを見て話しているのが聞こえた。
「あと……山田さんはどこ?」
 うしろから声をかけた。
「――ここだ」


 運営に確認すると、第4Rはやはり行なうという。
 いったん 8.4 のセイルをばらしてV8 7.5 のセッティングをする。その最中に気づいた。
 しまった。セイルナンバーをつけてない。
 それで一気に気力が萎えてしまった。それでもとにかくとセッティングする。ひさしぶりなので戸惑う。どうにかできた。あとはセイルナンバーをつけるだけ。
 と思ったら第4Rがスタートしてしまっていた。
 DNF確定かぁ……。
 せっかくセッティングしたのだからと道具をビーチ際に運ぶ。
 するとそこへI田さんがポートで上ってきた。ビーチに立っているぼくに気づいたのだろう。えっ、なんでそんなとこ、いるの? という顔をする。次にSさんが上ってきてぼくに気づいた。まったくI田さんと同じ表情をする。あはははは。


 レースは四レース成立したのでワンレースカット。
 でもさすがに三レースもDNFじゃ、どうしようもない。どべ。最下位。いいわけのしようもない。



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Takehiro Yamada