
こてんぱん
2001 年 06 月 03 日(日)
本栖湖FANビーチ
晴れ
Sail:RX1 8.4(NEIL PRYDE) Board:DROPS 9'6"
本栖湖には十時ぐらいからブローが入り出した。でも不順な風でいつものようにいっきには吹きあがらない。ゆっくりとセッティングしたり、セイルにナンバーをはったり――Sさんが我慢できなくなったのか、出艇したが、やはりいまいちのようだ。ほとんどプレーニングしていなかった。
合宿をしている逗子のココナッツボーイのひとたちも同じような感じだ。
そんな調子で、十二時をまわった。
陽射しは強い。空気が薄いせいだ。
今日のメンツはT、Sさん、それにI田さん、M木さん、K藤さんたちもくるという。めずらしい。大所帯だ。
I田さんたちはまだ、到着していなかった。
メールを打つ。
「本栖湖はどん吹きでっせ」
送信ボタンを押そうと思ったらI田さんの声が聞こえた。
「道志でパンクしちゃったぁ」
ぼくがあわててメールを削除したのはいうまでもない。
風はあいかわらず不順だ。
T、Sさんは出艇してしまった。セッティングをすませたI田さん、M木さん、K藤さんはビーチぎわで準備運動をはじめた。ぼくはウェットスーツにも着替えず、あまりの陽射しに雨傘をさしてたたずむ。
今日ははずしかなぁ。
晴れている日に本栖湖で風がきちんと吹かないパターンに合致してしまっているような気がする。気温が妙に高いとき――大気の状態が不安定なときである。寒気がおりてきているという話だから大気の状態が不安定な可能性は高かった。
半分あきらめていると、湖面が強いブローに黒くなった。今まで以上に強いブローだ。時計を見ると、二時半。
――来た。
セミドライに着替えて戻ってくるのは十分とかからなかったはずだ。
ぼくは腕組みをしてビーチにたたずんだ。
風はあいかわらず不順だった。
しかし、ぼくはその現状認識を無視した。
水に入る。出艇した。ガスティ。けして調子はよくないが、乗れないわけではなかった。ブローをつかんでも予想以上に風は軽く、アンダー。
本栖湖の風が軽いのはやはり空気が薄いせいだろうか。
何度か往復していったんビーチにあがってセイルのセッティングをかえる。アウトを二センチ縮める。このセッティングだとセイルがブームに触れてしまうが、しかたない。パワーが必要だ。
少しは走るようになった。
セッティングをかえたのは正解だったかな、と自画自賛していたら風が上がってきた。あらら。あわててセッティングを戻す。
そこへTがやってきた。
来週のレースのために練習しよう、という。
Sさん、T、ぼくの三人で三本、模擬レースをこなす。
風はガスティでアンダーぎみ。ぼくとしてはもうすこし風が上がってほしいところだった。なにしろTもSさんもレーシングのボードだからだ。ぼくはそれにスラロームで対抗しようというのである。
最初からいいわけしているところからわかるように結果は散々であった。
第1R。
風上からSさん、T、ぼくと並んでビーチスタート。スタートの合図はハンデというわけでぼくがする。
スタート!
ブローがきていたのですぐにプレーニング。そのまま、走る。風がすこし足りない。思ったより上れない。一般セイラーの下を抜けようとしたらブランケットになっていた。ボードがとまってしまう。ちくしょう。タック。その一瞬に風上側を見る。Tが全然、ぼくとはちがう角度で上っていっている。やばい。Sさんの位置はわからない。
ぼくはポートで岸の方へ――だめだ。上らない。FANビーチすらクリアできそうにない。ビーチの近くでタック。沈してしまった。運悪く風がなくてリカバーできない。あわててビーチまで泳ぐ(反則)。そこで足をつき、セイルをあげてスタート。スタボーでいけるところまで突っ込む。また、タックで失敗して沈。Tがまだ、上っていっていることに気づく。あわててセイルアップ。顔を上げて風上の仮想マークの方を見ると、すでにSさんが仮想マークをクリアしたらしく下りだしていた。
ポートで岸の方へ。風向きが悪い。タックしようか、迷うが、そのまま、行けるところまで。そして、タックで沈。泣ける。水面から顔を出した視界に風下へ下っていくTの背中が見えた。
リタイヤしようかなぁ。
根性をふるいおこして上マークまで一応、上り、コースを走り切る。
1着:Sさん 2着:T 3着:山田
第2R。
今度は風上からぼく、T、Sさんの順にビーチスタート。第1Rの結果でハンデをつけたわけだ――スタートした直後は風がなかった。バランスをとっていると、下のSさんがプレーニングして先行した。それを追ってぼく――しかし、上り角度がちがいすぎてラインは交差。ぼくはSさんの下を走る。また、Sさん、Tの位置は背後になり、どこにいるのか、わからなくなる。突っ込めるところまで突っ込むと、そこは無風になっていた。
あれ?
風上を見ても水面はのったりとしている。タックしようとしたが、沈。セイルアップしてセイルは立てたが、風はない。ぷかぷかと水面に浮かび、バランスを必死にとる。岸の方には少しは風があるのか、Sさんのセイルが走っている。しかし、そちらに向かうことすらできない。
バランスをとりつづけること数分。Tが仮想上マークを回航するのが見えた。こっちは動くこともできず、立ちすくむだけ。じっと風上の水面が黒くなったのを見つめていた。
Tがぼくの方へ下ってきた。
風はまだ届かない。Tはぼくのすぐ上の位置でジャイブしようとしてあまりの無風状態に沈。そこへ風が届いた。
ぼくのボードがようやく動き出す。
なんとか岸寄りまで走ったが、全然、上れていない。
ふりかえると、湖上にTとSさんのセイルはなかった。あきらめた。DNF。
1着:T 2着:Sさん 山田:DNF
もう模擬レースはいいや、という気分になっていた。ぜーんぜん歯がたたねー。あんまりだ。みんなしてぼくをいじめるんだ、という気分。
Tがにこにこ笑いながら、やろう、という。
はははははは。
――第3R。
風上からSさん、T、ぼくと並んでビーチスタート。
スタートの合図をするのはぼくだから当然、スタート直後に先行するのはぼくだ。Tの下受けの位置にもぐりこめた。よっしゃっ、と思ったもつかの間、ハーフプレーニングしたTに抜かれた。逆にブランケットにいれられ、こちらが一瞬、失速。すぐに追いかけるが、一般セイラーを上に避けたTにはついていけなかった。ぼくは一般セイラーの下側へ。
それでも今回は風があった。
フルプレーニングして上る。
タックをかえすとき、T、Sさんの位置をチェック。Tは上を先行している。
Sさんは風下にいた。セイルは立っているが、走っていない。チャ〜ンス。ぼくは岸方向へ戻って、ふたたび、沖へ向かう。今回は風があるせいもあってタックで沈はしてない。奥にいきすぎないようにしてタック。反対側の位置にSさんのセイルが見える。少しぼくの方が上に位置しているようだ。このリードをキープしたい、と思いつつ、岸方向へ。少し走って風向きが悪いことに気づいた。もしかしたらSさんに有利な風向きかも――一瞬、タックをしてSさんと向きをあわせようか、と思った。結果からいうとそれが正しい選択だったような気がする。
しかし、そこへ強烈なブローが来た。
沈を予想してタックはせずにそのまま、走る。
強烈なブローでフルプレーニングしたまま、Sさんとミートした。やはりSさんが風上側を抜けていく。
ちくしょう。
その瞬間だった。
前のフットストラップがとれた。
上らせようと、前のストラップを引き上げるように力をかけていたところへだ。
ぼくの左足は跳ね上がり、ボードは垂直に舞い上がった。激沈。確認してみるとフットストラップのネジが外れてしまっていた。
はー。
リタイヤ。
1着:T 2着:Sさん 山田:DNF
ぼくがフットストラップを直している間に、SさんとTはふたりでマッチレースをやった。ビーチに座っていたI田さんにいわれてそのことにようやくぼくは気づいた。湖上に目をやると、Sさんが風上から爆走して下っていくところだった。Tはそのうしろだ。おっと今回はSさんの勝ちか?
ぼくはI田の隣に腰を下してメロンパンを食って栄養補給。
風下側のエリアでM木さんが沖に向かってセイリングしていた。もしかしたら吹いているときに乘っているのを見るのははじめてかも――M木さんもK藤さんも全然、普通に乘っている。たしか本栖湖デビューのはずなのだが。
「うまくなりましたよねー、M木さん」
先生のI田さんに感想を述べると、I田さんはそーだよねー、とうれしそうに笑った。
戻ってきたT、Sさん、それにK藤さん、M木さん、I田さんとしばらくビーチにたむろして雑談。とくにK藤さんの下り癖について。
風はさっきからかなり強く吹きはじめていた。ようやくいつもの本栖湖らしくなった。
時計を見ると、四時をまわっていた。
ラストラン。出艇した。
憂さを晴らす意味もあってがんがん走る。
ジャイブジャイブジャイブ――調子がいい。このところ不調だったジャイブが気持ちよく決まる。どうやら内傾不足が原因だったらしい。内傾して後ろ足の膝をいれてやることできゅんきゅん、ボードが回っていく。振り返る動作をしなくても。
全然、沈しないので休めない。走り続ける。疲れてきた。時々、腰が脱力して足が萎える。気持ちが悪い。喉が乾く。それでも走り続けた。I田さん、Tとは似たラインを走っているらしく頻繁にミートする。Sさんの姿はない――どうやらすでに片付けにはいってしまったらしい。
五時二十分まで、だいたい四十分、乘った。その間、ジャイブの失敗で沈したのは二、三回。自己記録かもしれない。さすがにうれしい。風はまだまだ吹いていたし、まだ、身体は動くような気がしたから乗ろうかとも思ったが、腹八分目が健康の秘訣よ、とつぶやいてやめた。
ここでやめたのは正解だったようだ。なにしろ晩飯を食っているときに足がつってしまったぐらいだから。肉体的には限界だったのだと思う。
ちなみにTとSさんのマッチレースは最後の最後にTがSさんをかわしたらしい。これでTは三連勝と勝ち星をのばしたのであった。
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Takehiro Yamada