新しいセイルを使えたからいいのだ




2001 年 05 月 26 日(土)
葉山長者
くもり
Sail:CORE 5.3(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)



 朝、目を醒ますまでずいぶんと迷った。
 今週はどこへ行くのか――予想天気図を見ると、日本海側に低気圧がはいっているのだ。その気圧配置は湘南に南西の風とウェイブコンディションをもたらす可能性が高い。その程度の予想はするぐらいの知恵は最近ついてきた。
 でも本栖湖ならそれは確実のような気がする。
 うーん。
 よし、葉山へ行こう。


 途中、逗子の様子をチェックしたが、あまりいい感じではなかった。サイドショアが吹いているのか、と思うほどの角度で沖にでていくウィンドを目撃する――ずいぶんと潮が引いている。そういえば、大潮だっけ。
 葉山では暗礁があっちこっちあらわれていた。
 五平米だと風は足りないかな、という感じだった。六平米のセイルの持ち合せはあいにくとない。どうしようかな、と思っているうちに五平米オーバーになった。
 出艇しているのは二、三艇というところ。見た感じスラロームだ。
 そこへSさんから電話があった。――今、どこなの、と尋ねるので正直に答えると、一瞬、Sさんは絶句した。
「Sさんは今、どこなの?」
「本栖」
「えーっ」
 完全に連絡の行き違いだ。
 今日は用事があるというのでSさんはオフだとすっかり思っていた。
 そして、Sさんの情報によると、本栖湖も吹きはじめているという。


 風はけっこう上下しているようだった。
 「シャークス」の店長のホームページでの予想通りだ。三枚、セイルを張って待て、という話だったのだ。
 さすがにDROPS 9’6” をだす気にはなれなかった。風が強いからというのもあったけれども、スケグを海面下の暗礁にひっかけてしまうような気がした――というわけで、ウェイブボードに先週、手に入れた 5.3 のセイルを張る。ニールプライド CORE。セッティングは試し張りしたとおり。
 長者側の海岸から出艇した。
 あいかわらずインサイドは長者ヶ崎を回ってきたきついブローがやってくる。その風でプレーニングしたが、堤防をこえたあたりで風は弱まった。テイルをひきづりだす。プレーニングしないまま、二往復ほどしたが、風が上がる気配はない。
 だめか。本栖湖に行くべきだったかな。
 駐車場に戻ると、Tがようやく到着していた。雑談をしているうちに風が上がってきたような気がしたので、ぼくは再び、出艇。今度はセイルのアウトのテンションを二センチ緩めてみる――これで一応、カタログ通りのセッティングのはずだ。
 結果は先ほどといっしょ。インサイドのブローでだけプレーニングすることができた。
 他のセイラーはプレーニングしていたので――セイルはたぶん 4.7 ――今度は粘ってみる。が、プレーニングせず。腕か、ボードの浮力か、体重か。
 海から上がると、風はほんとうになくなってしまった。
 駐車場に戻るとTが 5.3 のウェイブセイルを張り終えていた。


 今日は打止めかぁ。
 全然、乗れなかったなぁ。
 ま、5.3 のセイルが使用できたからいいか、と自分をなぐさめる。手に入れたセイルを半年も使う機会もなく、日々をすごしてしまうよりは、と。
 ぼんやりと葉山公園から広がる海を眺めた。
 スラロームをセッティングして出ようかな、と考えていたのだが、今いち気分が乗らない。どうしようか、まったく決断できず、うだうだしていた。それが幸いした。
 風が上がりだしたのだ。
 どうしてだか、わからない。
 もしかしたら潮が満ちはじめたのが原因かもしれない。
 二時ぐらいの出来事だった。
 出艇してみると風は五でオーバーぎみ。
 よっしゃっ。
 いきなり快感モード。
 葉山公園前からTが出艇してきた。彼はシマーのウェイブセイル 5.3 にF2の強風用スラローム。かっとんでいる。どんどん沖にでていく。沈したのでなんとか、追いつく。そこでぼくはジャイブ→沈→ウォーターと一連の流れをスムーズにこなして方向転換。
 ウォーターしたTはさらに沖へ。
 浜をめざしながらぼくはうねりにあわせてレイルトゥレイル。がーっとうねりを下るときの加速感にドーパミン、だだ漏れ状態になる。何度もサンマに羽をつけたようなトビウオの飛翔を目撃する――腹の下の鰭が垂直尾翼になっていることに気づき、妙に感心してしまった。
 三十分ほどセイリングしていてふと気づいた。
 あれ?
 Tは?
 セイルは見当たらない。三、四枚、見えるセイルはどれもちがっている。
 トラブルか、と緊張しながら沖へラインをのばすが、それらしいものは見えない。
 二往復ほどした所で、葉山公園前からTがかっ飛んできた。どうやらたまたま、ぼくがTを気にしたとき、ビーチに上がっていたらしい。
 腹一杯ではないけれど、満足して――ジャイブはあいかわらずうまく決まらないのだけれども――ビーチに上がってひと休み。
 駐車場に戻って葉山公園前の海岸を見下ろすと、Tがボードを交換しているところだった。スラロームからウェイブへ。
 Tはあけっぴろげな笑みを浮かべていた。
 きっとぼくもそうだったのだろうと思う。


 オーバーぎみだからとアウトを二センチ引き直して再出艇。
 風は少し足りなくなっていた。そのせいだろうか。急に調子が悪くなってしまった。セイルのバランスがおかしくなってしまったような感じ。
 少しセイリングしてみたが、その感じは拭えない。ビーチに戻ってセッティングを元に戻す――すなわち、試し張りしたのとは別のカタログ通りのセッティング。
 乘ってみると、そっちの方が調子のいいことがわかった。
 ふーん。
 風はやはり微妙に足りなくなってきていた。徐々に落ちはじめている。出艇してきたTはプレーニングするが、ぼくはしないときがおおくなる。少くともポートで沖へ出るラインだとほとんどプレーニングしなくなってしまった。
 スタボーはうねりに乗せられるのでまだ、プレーニングすることができるのだが。
 風が足りなくて――あるいは腕のせいで――風上に上るのがむずかしくなってきた。
 少しずつ長者の方から風下の葉山公園の方へ移動してしまう。
 ここらあたりが限界かな、と見切りをつけて葉山公園前の海岸に上陸。
 時刻は四時半。
 今日のウィンドは終了。


 道具を片付けたあと、Sさんに電話をしてみると、結局、本栖湖は一時間ぐらいしか吹かなかったらしい。Sさんの声は沈んでいたという――なにしろその一時間の間、クルマの中で寝てしまっていたというのだから。


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Takehiro Yamada