アウトでジャイブ




2001 年 02 月 18 日(日)
御前崎菊川河口
Sail:NR 4.7(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)



 金曜に見た予想天気図では吹くとは思えなかったのに、なぜか、今日も御前崎は吹いている――恐るべし! 朝寝坊して菊川の駐車場に到着したときには近くの野良猫が住む雑木林が風でわさわさしていた。
 太平洋自転車道の提から海を見る。
 すでに十数艇のウィンドが走りまわっている。見た感じセイルは小さい―― 4 の前半か、ジャストというところだ。風上――右手の海のほうは砕ける波頭に白い。波のサイズは膝腰。小さ目。セッティングしているセイルをちらちらと見てセイルサイズをチェックしながら車に戻る。やはり 4 。
 いくつにする? とTに聞かれた。
「4.2!」
 元気よく答える。
「山田先生が 4.2 じゃなぁ」とぼやきながらTもSさんも 4.2 をチョイス。
 ちなみにTとぼくはよく互いに「先生」をつけて相手のことを呼ぶ。Tはぼくのスキーの先生で、ぼくはTのウィンドの先生だったことがあるからだ。過去形なのはウィンドのレースではあっさりとTのほうが先着するからである。
 ま、過去の遺物である。
 ボードのセッティングをしてビーチに運んだ。
 んー。
 しばらくそこに佇んで海の様子を眺めた。
 風向きは弱干、オンに振れている。
 それにしても砂が全然、飛んでいなかった。ほんとうにどん吹いたときは、砂浜の乾いたところでは足元をたなびく煙のように砂が飛んでいく。思ったより風はないのかも。
 ―― 4.7 かなぁ……。
 考えこみながら提をのぼる。子供が砂遊びをしていた。頂上で海をふりかえると、ウィンドのセイルはそれほど動き回ってない。セイルサイズを 4.7 にすることを決意。
 ちゃっちゃっちゃっ、とセイルをセッティング。ダウンを強目に引く。
 一本、アウトにでてインに戻ってくる。途中、掘れた波でジャンプ。あかん。飛びそこねた。板を蹴りこむタイミングが早すぎた。全然、高さがない。
 水が冷たかったので――ようするに沈したわけだ――、報告がてら駐車場に戻る。
 まだセッティングしているSさんとTと雑談してふたたび、海へ。水が冷たく感じたのはTの指摘通り、暖かかっただけらしい。
 何度か、アウトとインを往復。
 ビーチにあがると、風上からTが、風下からSさんがやってきた。
 Tは例のカスタムが調子いい、という。JP255よりも動かしやすいとも。乗ってインプレッションしてくれといわれたが、笑って断わる。別に乗ってもよいのだが、乗ると怪我するとぼくの神様が耳許で囁くのだからしかたがない――いや、これは冗談だけど。嫌な予感がするのはたしか。
 かわりにというわけではないが、SさんのJPを借りてみる。
 ほんとうはボードだけ交換したかったのだが、めんどうなのでセイルごと。これは完全に失敗。あたりまえだ。セッティングからなにからまったくちがうのだから。せめてセイルぐらい自分のをつかえばよかった――ゲッティングアウトする。ボリュームがないせいで、ボードが全然、走らない。風が少しでも足りないと、テイルをひきづるような感じになる。
 ボードを蹴り出すようにして下りぎみでボードを走らせる。
 インに戻ってきて――かなり風下に下ってしまった――ブローでプレーニング。
 ビーチの寸前でくいっとバックサイドに回してペッと板を返す。すごく動きがはやい。レスポンスがいい――驚いたことに板を返した瞬間、スケグが完全に抜けて空中に浮き上がってしまった。うしろのフットストラップが中途半端に抜けた状態で着水。爪先立ちでデッキに打ちつけてしまう。いてーっ。指がーっ。
 風が上がってきた。
 自分の道具で乗る。風向きもサイドに振れてしまった。
 行って帰って行って帰って。強引に腰ぐらいの波にバックであてこみにいったら板を返すタイミングが遅すぎた。一瞬、波の背にでてしまう。よっこいしょ! セイルに風をいれて波の前へ落ちる。
 今日はどこかリズムが狂っている。
 二度ほどフロントにふる。ランニングぐらいの状態になったときにひょいっとボードをフラットにしてちょいともう一度回して踝ぐらいのスープにあてたらボードが返った。なんともなさけないライディングだったけれども、人に話すときは、フロントにふってスープにあてこんだ――となるんだろうなぁ。嘘はないけど、嘘だな。
 いずれにしてもどうやれば、ダウン・ザ・ラインがとれるのか、わからない。どのあたりから波に乗れば、いいんだろう。
 ボトムターンへの道は遠い。
 アウトでTを発見した。
 追いかける。スラロームみたいだな、と思いながらも。
 Tがジャイブに失敗して沈。その上側を抜ける。何か、Tが叫んでいた。何をいっているのかはわからなかったけど、セリフは決まっている。
「ジャイブ!」
 あとで確認したらやっぱりそうだった。
 うねりーっ、をひとつ越えてジャイブにはいる。ボードがまわっていく。ひょい、とTの方を見る――それがよかったのだろう。ボードがそのまま、止まらずに回りつづけていった。
 セイルを返してジャイブ成功。
 視線かぁ。
 その次のアウトでも視線を回転の中心方向へ向けてジャイブしてうまくいく。
 なるほど。
 三時になると、さすがに血糖値が下がってきた。つまり空腹である。ビーチにあがって、何か食べるか、迷う。ふと見ると、Sさんがゲッティングアウトしているところだった。ずっと見ていると、ずんずんと波を越えていく。おおっ、昨日までのSさんとは思えない力強さだ。一瞬、他のセイラーかと思ったほどだ。完全にアウトに出てさらにセイリングをつづけるSさん。ついに壁を乗り越えたらしい。
 非常に喜ばしい。
 そのあと、ビーチで会ったときのSさんの嬉しそうな顔――。
 ぼくは空腹を我慢してセイリング。集中力が途切れがちなので気合いをいれて乗る。他のセイラーとミーティングしたときははやめに針路を変更するようにする。もちろんインに戻ってくるときだけど。
 アウトからビーチの方を見たら再び、Tを見つけた。インサイドだ。見てたら、波間をセイルがリズミカルにフロントにふられ、とまり、フロントにふられた――おいおい、あいつ、うしろから見たかぎりだと、きちんとフロント・ライディングしているじゃないか。まじかよ!
 四時半。
 ラスト一本。
 気合いをいれて海へ。
 スピードをつけることはできなかったけれど、蹴り出すタイミングをそれほど外さずに掘れた波で三本ほどジャンプできた。
 ふぅ。


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Takehiro Yamada