Tの災難




2001 年 02 月 03 日(土)
御前崎菊川河口
晴れ
Sail:NR 4.7(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)



 ハイウェイカードを機械にさしこんで料金所のおっちゃんがほんの少し渋い顔した。
 料金不足かな、と思っていると、おっちゃんは新しいハイウェイカードを取りだして機械にさしこむ。
 あれ?
 おごり?
 操作のあと、おっちゃんは領収書とハイウェイカード二枚を返してくれた。
「こっちのハイウェイカードには一万ちょっとはいってるから」という。
 どうやらハイウェイカードの裏面に支払いの履歴が記入されるけれども、そこのスペースがいっぱいになったために、ブランクカードにデータをうつしてくれたものらしい。あとでハイウェイカードの裏面を見ると、「再発行」と記載されていた。
 こんなことはじめてだ。
 ぼくは車をだしながら助手席のTにいった。
「きみといると変なものをよく見るよ」
 何しろ彼と本栖湖へウィンドにいった帰りには猪の親子を見たことがあるのだ。


 というわけで今回の御前崎行きはTとふたり連れだった。
 Sさんは徹夜の仕事で行けず。
 御前崎には九時前に到着した。風はすでに吹いている。海を見ると、波のサイズはいつもよりもワンサイズ小さい――膝腰だろうか。
 ぼくは一時間ほど仮眠。その間にTは様子を見ながらセッティング――結局、彼は 4.2 のセイルを選択。最初にでたセイラーが 4.2 でそれなりにのれているらしい。
 目を醒ましたぼくは迷ったので 4.7 をセレクト。
 寒い。しかし、今回は秘密兵器をもってきた。キッチン手袋である。
 ――1本目のゲッティングアウト。
 波が小さいおかげで苦労はしなかったが、風がたりなかった。中二週のウィンドなので身体も全然、動かない。途中、風が抜けて根性なし〜っ状態で沈。ウォーターでリカバーしてアウトまで出てふたたび、根性なし沈して方向転換。
 インに戻る――さすがにキッチン手袋。指先は冷たくない。気をよくしてうねりにあわせてレイル・トゥ・レイルをしてみる。波のサイズがないせいか、まぐれなのか、思ったよりも気持ちよく動いた――ような気がする。風下にランチング。ビーチにあがってすぐに海に戻る。そのまま、波にまかれて流される。あれ?
 どうやら堤防のように突き出ている排水管の風上側と風下側ではカレントの速さが全然、ちがうらしい。風上側のほうが楽にゲッティングアウトできるようだ――もっとも失敗すると排水管にへばりつきそうになってしまうが。
 気合いをいれてリトライ。ふー、アウトにでれた。風はオーバー気味になってきた。ハーネスにたよりきってちんたら乗りで走りつづける。今日は根性が足りない。ちんたら乗りでアウトにでてちんたら乗りでインに戻ってきて、ビーチで一休み――をくりかえす。
 キッチン手袋の内側に海水がはいってきたため、ブームを握っている手にうまく力がはいらなくなってしまった。腕パン。握力がなくなってしまう。
 ふとアウトでおかしな気配を感じた。
 何だ。
 目をこらして菊川河口の――ちょうど風力発電のプロペラの方角を見ると。
 あっ、富士山。
 ほとんど空に溶けこんでいる。富士山についた雪しか見えない。その雪は脳天を割られたときに流す血のような模様のため、いかめしい印象だ。関東や山梨から見るときはずいぶんやわらかい印象なのだが。
 インに戻るとき、途中のうねりに乗せてばびゅーんと加速させて楽しむため、どうしても上側のビーチにたどりつけない――このときのうねりの向きも問題なのだと思う――。なのでちょっと禁欲して一生懸命、上って風上側のビーチにランチングして昼休み。
 Tも休憩。
 今日はなんだか、ただ乗ってるだけだなぁ(いや、いつもか)――と思いつつ、第二ラウンド。Tが今日は暖いというし、腕パンがきついのでキッチン手袋ははずす。
 風は若干、落ちていた。4.7 でジャストアンダーという感じ。
 ちんたら乗りでしばらくアウトを走る。いきなり指先に激痛。Tにだまされた。ジャイブ。今日、はじめてのチャレンジだったが、今までよりも少しは形になってきているような気がする。
 復路は波がわれる手前でふたたび、ジャイブ。
 後半にひょいと体重を前にもっていくことができた。いい感じ。沈せずにそのまま、沖へ。風は弱くなってしまっている。Tは 4.2 だからきつだろうなぁ。そんなことを考えてうねりを越えているうちにジャンプしてしまった。油断していたので――ちんたら乗りだったし――背中からおちて沈。ちぇっ。
 今度はインサイドまで戻る。
 風上側を見て風下側の波を見る。沈しているやつはいない。波は膝ぐらい。何がなんやらわからないが、バックサイドにふって(つもり)、フロントサイドにふってみた。ひゅんと加速して――視界は真っ白。目がついていってない。自分が波のどのへんにいるのか、全然、空間識を失う。ボトムターンなのか、ただのジャイブなのかさっぱりわからない。本能的(?)にセイルをひらくと、ぽんと風がはいった――次の瞬間、ボードがくりんと回る。
 おーっとこれがトップターンか。
 一瞬、そう思ったが、風が急にはいったのでスケグが抜けてボードが回っただけらしい。
 ビーチに上ると、Tがセイルをかついで駐車場に向かっていた。
「セイル、かえるの?」
 たずねると、Tは悲しげな顔をした。
 ボードが壊れたのだという。


 指の痛みに耐えきれなくなったのでキッチン手袋をしなおして再び、海へ。やはりキッチン手袋だとずれて具合がよくない。風はまた上がってきてオーバー気味になったが、三時ぐらいには風がなくなりはじめる。疲れてきたことも今日は終りに。ちょっと何かアクシデントが起きるような予感がしたし。
 実はそのあと、風は復活して5時ぐらいまで楽しめたらしいのだが、まぁ、しかたないでしょう。


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Takehiro Yamada