御前崎一人旅(一泊篇復路)




2001 年 01 月 14 日(日)
御前崎菊川河口
Sail:COMBAT WAVE 4.2(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)



 12 時間以上、たっぷりと眠って目を覚ますと、風がどん吹いていた。
 昨日はアンダーで今日はオーバーかい。どう見ても 4.2 でオーバーのようだ。寒いので今いち気持ちがのらないが、それでも 4.2 をセッティングする。
 波は肩から頭。
 天気はいい。よく晴れている。
 海に入り、ビーチスタート――って

 ちょっと待てっ
 アンダーやないかっ

 また、だましかいっ、とわめきちらしながら――ただし心の中で――スープに巻かれてあっという間に風下へ流される。まいる。いや、状況を読めなかった自分が悪いんだけどね。4.2 でジャストアンダーという感じなのだけれど、板を走らせるのがチョーヘタなぼくとしてはとてもこまる。しかも波が割れるあたりが一番、風がなくなる。
 いち、にっ、さん、とどうやらアウトに向かって三個所、波が割れるポイントが積み重なって並んでいるようだ。なんとか二番目まではクリアしていけるのだが、三番目で潰されてしまう。しかも波が猫手の状態になった瞬間にぶち当たってしまうのである。今日一日で四回もそのようにして巻かれてしまった。なんか呪われている。
 浅瀬に立って足元――膝上のあたりを見て驚く。膝上でカレントがじゃぼじゃぼと渦を巻いているのである。まるで川に足を突っこんでいるようだ。なんて速さだ。押し寄せてくる波がそのまま、横流れの――ビーチに沿ったカレントになってしまっているのだろう。
 逗子とかのウェイブコンデションでビーチスタートするときはでかめの波を無視してその引き波を使って――水深も一時的にあがるからスケグを気にせずに――板にのるのだけれども、ここだと引き波自体がほとんど発生していないような気がする――すべて横流れのカレントになってしまっている感じ。
 だからというわけでもないのかもしれないが、よくスケグを海底にひっかけて沈してしまう。
 あとよくあるのは――もちろんぼくの場合だが――板をスープの向こうにやれずにそのまま、押し潰されてしまうパターン。ボードをスープに対して垂直に保てないのだ――保つことができれば、容易にスープの向こうにやれるのだが。垂直にしても一瞬のうちにカレントの力でボードが斜めになってしまうのである。そして、無情にもぼくはセイルに押し倒されてしまうのである。いや。やめて。わたし。そんな女じゃないの。そんな気分。
 中途半端にアウトにでてしまうと、今度はそこで崩れる波に巻かれる。ぐりんぐりんと洗濯機の中のようにもみくちゃにされる。ボードに頭を殴られないように、いつもマストのブームより少し上側をつかんでいるのだが、大車輪してしまうことも再三、再四だ。
 何周か、魔のトライアングルコースを回ったあと、偶然、アウトに出ることができた。
 いきなりオーバーセイルだ……。

 あっ

 チョップに弾かれた。セイルに投げ飛ばされて激沈。
 今日一発目のアウトなのにぃ、とぼやきながらウォータースタート。セイリングしていると、寒さのあまり両手の指先が爪の間に針を差しこまれているように痛みだす。両手を握ったり閉じたりして、顔は百面相をやりながら――もちろん血行をよくするためだ――インへと向かう。ふと風上側を見た。
 波だ。でかい。オーバーヘッドぐらいある。グットタイミングだった。ちょっとだけ板を上に向けてやると次の瞬間、波に乗っていた。くりっと板を下に向けて加速。おーっ。何もできなかったけど、ちょっと感動しながらスープ地帯を抜けてビーチにあがった。
 いやぁ、まぐれというのは恐ろしい。
 昨日もそうだったが、干潮らしく、昼をまわるとどんどん水深が浅くなっていく。一番手前の浅瀬がくるぶしぐらいになる。それにつれて波のサイズもダウンしてきた。
 二時ぐらいにもう一度ゲティングアウトに成功。ジャイブは失敗。セイリング中が一番寒い。波に巻かれているときが一番暖かいような気がする。インサイドまできたとき、すぐうしろに大きめの波をあることを発見。よしよしこれだ、これだ、この波に乗るんだ――そう思ってもう一度ふり返ってみたら全然突き離してしまっていた。
 ちぇっ。
 よっこらせ、とテイルジャイブ。風はない。どかんときたスープ。またかい、という感じで――ほとんど悟りの境地ですな――巻かれてビーチまで。なれたもんだ。
 疲れたのか、風が落ちたのか、何が原因なのか、わからないけれど、ビーチスタートすらできなくなってしまう。はー。寒すぎて気合いもはいらない。
 三時半になったのを機に今日のウィンドをおしまい。
 海からあがる。
 なんか、はじめて菊川に入ったときが一番、まともに乗れたような――忸怩たるものあり。


 駐車場で道具を片づけていると、セイルにかがみこんでトップパネルをつんつんやっている人がいる。なにやってんだろー。セイルを破いたのかな。と思っていたら、連れをふりかえって一言。

 凍ってるよぉっ

 うーん。なんてこったい。


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Takehiro Yamada