
御前崎一人旅(一泊篇往路)
2001 年 01 月 13 日(土)
御前崎菊川河口
Sail:NR 4.7(NEIL PRYDE) Board:WAVE265(MISTRAL)
某所では三浦トリオあるいはスラローム三兄弟などと呼ばれているのに、今回もなぜか、ぼくひとり。
ひとり寂しく御前崎の菊川河口の駐車場に車を停めたグットタイミングで携帯に電話がはいってくる。Sさんからだった――今日は三浦。風はない、という。
仮眠のあと、海を見にいくが、いつもの御前崎らしくない風。あるのはあるのだが――セイルは 5.0 ぐらいかなぁ。天気も曇り。いつもはよく晴れているというのに。御前崎が吹くときはいつも晴れという印象がぼくにはある。おかげで寒々とした風景だ。
手持ちのセイルからだと、4.7 か、5.4 のどちらか。ただし 5.4 はスラロームセイル。ここで張るのだけでも恥かしい気がしてしまうが、迷ったときはでかいセイル主義に従ってこちらを選択。カムだらけのセイルなんてひさしぶりなので張るだけでひと苦労してしまった。
じゃ、いきますか。
自分で自分に気合いをいれてウェットスーツを着る。
ファスナーをあげるため、ジップスライダーについている紐を車のバックミラーに固定してから身体をずりずりと低くする。途中まで上がったところで引っかかってしまう。さらにぐっと体重をかけた瞬間だった。
ばちんっ
あん?
なんだ、このばらばらと降ってきたプラスチックの破片は?
ファスナーが壊れてしまってのである。
とたん頭がテンパッてしまった。
帰るっ。
そう思った。帰る、絶対帰る、御前崎なんか嫌いだっ。ほとんど子供。大人になって考えた。そうだ。イワモトにいってウェット――正確にはセミドライスーツだけど――を買おう、と。
しかし、今のぼくにはけっこうきつい。
買った。クレジット決裁なところが大人だな。
それはたぶんこれだ。壊れたやつの半分ぐらいしか厚みを感じない。動きやすい――道具と離ればなれになって思い切りクロールしたけれども。そのとき、ずいぶん楽に泳げたのには驚いた。そのかわり倍ぐらい寒いのではないか、と思ったが、そんなことはなかった。
ふむ。道具は進化しているのね。
菊川河口に戻ってきてもう一度海をチェック。
波は膝腰かなぁ。
風が上がってきているような気がする――ってこれはほんとうに気がしただけだった。海に出てみると、わざわざセイルを 4.7 に張りかえたのにこれがアンダー。ウェイブはジャストアンダーだというけれど、へたくそのぼくには非常につらい。
風が上がった瞬間にうまくアウトにでれた。
うねりもそんなに大きくない。そのまま、アウトでジャイブ。おっとセイルが寝ちまった。よっこらせ、と持ちあげて無事、ジャイブ成功。なさけない。
ビーチに戻ると、いつも定番の風下の位置にたどりつく。
で、ここから再び定番の出艇するポイントまで道具をひきづって歩くのだが、笑ったことにいつもの半分くらいの距離に感じられたことだ。風がいつもほどないからだろう。空気も潮や砂に煙ってなくて澄んでいるため、風景が近く感じられる。
それでも足元を細かい砂が湯気のように流れていく――だから風はあるはず。そう思ったのだが、それがだましだった。
ずっとセイルを大きくしようか、迷いながら結局、4.7 で通してしまう。
一度だけインに戻ってくるとき、うねりにあわせてレイルトゥレイルがなめらかにできた。それだけを胸に海から上がる。三時半。一日かけてその一瞬だけか、と思うと――。
うーむ。
けっこう虚しいかも……。
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Takehiro Yamada