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ゼロサムゲーム




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2006/07/11up



 株式投資はゼロサムゲームではない。なぜか?


 ゼロサムゲームというのはたとえば、競馬のような博打のこという。競馬は馬券を買ったそのお金を集め、的中した馬券にだけそのお金を分割、分配するシステムだ。購入したお金と払戻されたお金は差引、ゼロになる。それゆえにゼロサムゲームという。たんにお金を的中した人間に集中する仕組みなのだ。
 実際には主催者が集めたお金から取り分をさっぴくため、マイナスサムになる。


 株式投資の場合も結局はゼロサムゲームだという話もある。
 株価が上昇するには株式市場にお金が流れこむ必要があり、それゆえにゼロサムゲームだというのだ。誤解である。ゼロサムゲームであるということは金が流入しないということだからだ。ゼロサムゲームというのは閉鎖系のシステムなのである。株式市場は開放系のシステムであり、ゆえにゼロサムゲームではない。
 たとえば、極端な暴落のときは株式市場から多くのお金が流出することになるが、それはゼロサムゲームでないからだ。


 仮に馬券市場が存在し、取り引き可能だと考えてみれば、いい。
 それでも馬券は株とはちがってゼロサムゲームになる。なぜなら馬券には締切があり、レースの結果がでるその瞬間に馬券は取り引き不可になるからだ。何人の手を渡ろうとも最終的には主催者から売り出された馬券と払戻された馬券の収支はゼロ(マイナス)サムになる。
 株券は企業が清算されるとき、いっしょに清算されるが、そのとき、馬券とちがって収支がプラスになることもありうる。企業が価値を生み出すからだ。まぁ、通常はマイナスになるだろうが。
 そして、重要なのは株には締切がないということだ。
 馬券とはちがい、通常の企業は継続するので、永続的に取り引きされる可能性がある。企業にとって重要なのは清算価値よりも継続価値なのである。取り引きされつづけるということは収支がゼロサムにはならない。清算されないからだ。


 しかし、それでも疑問は残る。
 どうして株式市場にお金が流入するのか?
 企業価値と株はゆるやかにリンクしているのだが、どうして企業価値が高まると株価もまた上昇するのか。株価が上昇するためには株式市場にお金が流入する必要がある。
 株は儲かるという幻想が人々を支配しているからか?
 ちがう。
 株というもののありかた――株にはその企業にたいする議決権がある、という事実。株を所有するというのはその企業の一部を所有するということだ。企業乗っ取りのことを考えれば、よくわかるが、過半数の株を手にいれることができれば、その企業を乗っ取ったのと同じなのだ。
 たとえば、年間1億の収益を上げるようになった企業の株価が上場したときと同じだったとしよう。上場したとき、その企業の年間収益は百万だった。それがゆえに株価はそれに対応した価格になるはずだ。細い計算はめんどうなので、仮に時価総額は収益と同じ百万とする。
 すると、百万でその企業の株を全部、買いしめれば、年間収益1億が手に入るのだ。
 当然、そうであるならだれかが株式市場にお金を――その企業を買うため、株式市場にお金を入れることになる。
 他に所有している株を処分して購入資金にあてるということはあるだろうが、ある企業の成長が他の企業のマイナスになるというゼロサムでない限り、所有している株も成長して「買い」の状態なのだから手放さないか、すぐに買い手がつくということになる。
 株式市場に資金が流入しない限り、その状態は均衡されない。
 企業の成長が株式市場への資金の吸引力を生むのだ。


 むろん、投資家すべてが企業価値というものを認識して株式市場へ資金をいれているわけではないだろうし、大多数は儲かるという盲信から株を買っているのかもしれない。
 しかし、弱いベクトルだろうが、経済が成長している限り、株式市場へ資金が流入する圧力は確実に存在する。
 それがどんなに小さい力であっても市場へ資金を呼びこむ流れをつくるだろう。
 床につくられたわずかな傾きでも水は流れ、やがて排水口へ集まるのである。



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Takehiro Yamada

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