
腹痛
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いつかこんな日がくるだろうとは思っていた。
ひどい腹痛に――内部からの疼くような痛みだ――顔が蒼くなっているのが自覚できた。油汗もにじんできている。何度もトイレに行き、三時間ほど我慢したが、限界だった。痛みがひどく仕事に集中できない。会社を早退し、帰宅した。
歩くのも辛いほど、左脇腹が腫れてきているのがわかった。
症状と今までの経験からおそらく腸閉塞を起こしているのだろう、と考える。
地下鉄に揺られ、吹きでる汗を拭いつつ、どうにか、自宅にたどりつく。
めずらしく家にいたKが早退してきたぼくに驚いた。
ベッドに横になる。
が、痛みと苦しみは少しも軽くならなかった。左脇腹がぱんぱんに腫ってきてそちらを下にして寝ることができないほどだった。腹痛だけではなく、腰痛も起きていた。精神的な余裕などまったくなく、イライラしながらひたすら耐えつづける。何度ものたうちまわり、衝動的に左脇腹を殴りつけたくなる。
この痛みが翌日までつづいたら病院へ行こうと思っていた。
限界だった。
ふらりと立ち上がり、ダイニングへ行き、Kに告げる。
病院へ行くと。
すでにKは病院をチェックしてくれていてすぐに電話をしてくれた。
しばらく話したあと、電話を切っていった。
夜勤の医師がちょうど交代するときなので二十分後にもう一度かけてきてくれ、といわれたと。
痛みと苦しみがなければ、怒り狂っていたところだった。
電話のやりとりは横で見ていた。
電話の向こうで――おそらく看護婦がいったん、医者を呼んできますから、と席を外し、そのあとの応対がちょうど当直の医師が交代するところなので、という返事だったのだ。
それはおかしいだろう。
交代しているなら医者はいるということだ。どちらの医者でもいいから電話にでることは可能だったはずだし、まず、第一に看護婦が医者がいるかどうか、知らないはずがない。知っているからこそ、呼びにいったのではないか。
急患を受けたくないからこその嘘だ。
さらにむかつくのはそんな嘘が通用すると思っていることだった。
二十分、ベッドで苦しみつづけ、もう一度、同じ病院に電話をした。
さきほど電話したものです、といったのでさすがに今度は医者がでた。ぼくが電話をかわり話す。最初からこまった声での応対だった。急患を受けたくない、とみえみえの声だった。ひととおり症状などを話し、うちには設備がないので他の病院にいかれた方がいい、と何度も何度も何度もくりかえしていう。けしてこないでくれ、とはいわないのが逆に腹立たしい。
よっぽど嫌がらせで訪問しようか、と思ったが、それはやめておいた。
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Takehiro Yamada