
じゅうきゅうまんはっせんえん
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じゅうきゅうまんはっせんえん。
それがはじめて手にしたウィンド一式の値段だった――198,000 円。いわゆるサーファー艇である。まだ、ウィンドサーフィン社のパテントが切れてなかった頃の話だ。完全な三角セイルでねー。フルバテンでもなかった。さすがにブームの色はオレンジではなかったけどね。
このサーファー艇は就職して一年目に同僚に売るまで――いくらで売ったんだろう。まったく覚えていない――ほぼ四年、乘った。セイルは一度、破ってしまったので二枚目だったけれども。
ぼくは今でもサーファー艇が初心者向けには一番だと思っているのだが、それはセイリングの技術のほとんどのことをサーファー艇から学んだからだ。プレーニングからハーネス。タック、ジャイブ。ウォータースタートと……学ばなかったのは――学べなかったのは、ドライブ・ジャイブとジャンプぐらいのものだろう。もっともドライブ・ジャイブはいまだにできるとはいい難い。
笑ってしまうのは、いちばん、苦労したのは実は、ただ、セイリングするということだった。
風がなければ、なんとか、なるのだが、風が上がるととたん、うまく乗れなくなる。
いろいろと原因はあった。その最大のものは独学だったということだった。海に行ってもほとんどひとりだったのだ。はじめたころは初冬だったし、ぼくが所属していたフリートの人間で学生なのはぼくひとりだった。他のセイラーがくるとしても土日で、ぼくは大概、平日に海へ行っていた。当然、他の人間のセイリングを見て覚えるということもできなかった。
それがいきなり乗れるようになったのはフリートの人間のひとことのアドバイスだった。
沈するときはセイルごとうしろに落ちた方がいいよ、と。
それまでのぼくは沈するときはセイルは風下側に、自分の身体は風上側に落ちるようにしていたのだ。これには理由がある。そのころ教本にしていた本の中に、沈するときはそうしろ、とあったのだ。セイルの下敷きになると危険だから、と。
ところがそのために、どうしてもセイルを体重で支えるということができなかった。だから風がなければ、いいのだが、ちょっとでも強くなると、乗れなくなっていたのである。
アドバイス通りにしたとたん、あっさりと強風で乗れるようになった。
アドバイスしてくれた人があきれるほど、簡単に、だ。正直、自分でも驚いた。いきなりカイトセイリングできるようになったのだから。風が抜けたら反射的にセイルを引きこんで身体をもちあげるという動作もできた。
世界がひろがった。
それがぼくのプレーニング初体験だった。
ちなみにどうして「じゅうきゅうまんはっせんえん」という値段をいまだに覚えているかというと、翌年――ほとんど半年後に、168,000 円に値下がりしたのです。
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Takehiro Yamada