常時接続環境
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「価値観が変わますよ」
そういったのはN沼さんだった。ダイヤルアップ接続からADSLの接続環境に移行すると――。
別にダイヤルアップ接続でも不自由を感じているというわけでもなかった。回線速度が上がってもあまり関係ないような付き合い方をしていたのだ。ネットワークとは――一番の理由は動画配信などをリアルタイムで見ようという発想がぼくにはなかった。動画ファイルやmp3のファイルは夜中のうちにダウンロードすれば、いいや、と思っていた。
一応、テレホーダイには加入していたし、ダウンロード用のプログラムをタイマー起動するのが可能な環境――FreeBSDにいたのでまったく気にならなかった。N沼さんの影響なのか、何人かがADSL環境に移行したこともあって、どんなもんなのかと思って多少、調べてみた。
すると次のような結果が出た。
うちの電話回線はADSL不可である、と。
理由は何なのかまではわからなかった。おそらく電話局からの距離がありすぎたのだろう。途中に光ファイバーがはいっているということも考えられなくもなかった。それであっさりと片がついてしまった。
もともとネットワークとの付き合いはニフティサーブでのパソコン通信からなので、長いといえば、長い。UNIX屋さんだったからまだ、商用化される前からインターネットの存在は知っていたので、パソコン通信からインターネット環境への移行は比較的早い方だったと思う。AsahiネットからキャラクタベースのWWWブラウザを使ってみたりしていた。当時はたしか、インターネットエクスプローラーもネットスケープもなく、モザイクが出現したばかりだったと記憶している。
まぁ、長ければいい、というものでもないし、新しいものにすぐ飛びつく性格ではないので、ADSLの存在自体は知っていてもあまり手を出そうとは思っていなかったのだ。いずれにしても使えないのだから仕方ないのだけれども。
それが最近になって出先――というより宿泊する場合にインターネットにアクセスする必要が生じてきた。天気図のチェックだ。ここらあたりはネットワークとは関係なく、ウィンドサーフィンをやっているということから発生した事情だ。
とくに御前崎へ赴いたとき、明日は風が吹くのかどうか、調べたい。
ショップ・イワモトのホームページに掲載されている西風予報をチェックしたい。
もちろん電話をかけてたずねれば、答えてくれるだろう。
ところがそういうことができない性格なのだった、このぼくは。
いろいろと選択肢は考えられた。
一番、有力なのはNTTドコモの携帯電話を購入してiモードでチェックするという方法だった。そうすると今もっている携帯をどうしようか、といつもそこで思考は停止していた。今もっている携帯を解約することは論外だった。あまりにも連絡先としてあちらこちらに番号を伝えすぎていた。
というわけで、次点の案はその携帯電話で、イワモトのホームページをチェックするというものだ――EZウェブなのだが、それが可能かどうか、知っている人間が近くにいなかった。それもしかたない。NTTの関係者が多いから。
知らべてみるか、と思っていた。思っていただけだったのはたんにぼくが怠惰だからだった。
最初から選択肢にはいれてなかったけれど、モバイル環境からインターネットにアクセスという方法も考えられた。
知り合いの何人かは会社から支給された環境でそれが可能だった。
が、ぼくは自前でやらなければならない。
Uっちーがそうやっているのも知っていた。
それでもどうも触手は動かなかった。
理由ははっきりしている。
自宅のテレホーダイ+ダイヤルアップ接続環境と二重にインターネット接続環境を持つのは無駄だと感じるからだ。というか無駄だろう。
魅力はあるのだが。
年始に携帯電話の売場を通りすぎるとき、モバイルカードに気づいた。Air-H"というやつだ。おそらくUっちーが使用していうやつだな、ということはわかった。興味を覚え、パンフレットをもらう。その片隅にRoosterというルーター機器のことが記載されていた。おや、と思った。製品説明のあるホームページにアクセスしてマニュアルがpdfであったのでダウンロードして読む。IPマスカレードを使っているのか……。
Roosterを使えば、LANからAir-H"経由でインターネット環境に接続可能だ。
そう。うちにもLANがあるのだ――マシン三台という構成とはいえ。FreeBSDマシンからダイヤルアップ接続し、そのマシンをゲートウェイにしていた(NATでIPシェアリングしていた)。あとの二台はデスクトップのBeOSマシンとノートブックのWindowsマシンだ。この構成のうち、FreeBSDをRoosterに替えてしまえば、OKだった。必要なときはRoosterの電源を落し――どうでもいいが、Roosterには電源スイッチがついていなかった――ノートブックとAir-H"のカードを手に出掛ければ、いい。
これでテレホーダイ+ダイヤルアップ接続環境が不要になる。Air-H"を外に持ち出しているときは自宅から自動でデータのダウンロードというのが、できなくなるが、それは重要ではない――毎日定期的に保存しているデータがあるのだが。
NTT回線と現在、契約しているプロバイダを解約してしまえば、そこにかかっていた金額がそっくりそのまま、Air-H"環境の接続料に充填できる――同じような金額なのだ。つなぎ放題の接続料金固定で。
この環境移行でふたつ、新しい状態を手に入れることができることになる。
モバイル環境からのインターネット接続。
常時接続(モバイルを使用しないときのみ)。
実は常時接続に関してさほど、気にしてなかった。
いつでもメールチェックできてもしかたないからだ。
出掛けている間に欲しいファイルを落としっぱなしにしておけるということぐらいかな、利点は、と思っていた。
ところが環境移行する少し前からBeShareというのを使いはじめていた――NapStarやGnutellaなどと同じようなファイル共有システム――これらをあらわす言葉を知らないので仮に――だ。MUSCLEサーバーを使用するのだが、これに接続しっぱなしにできるということに気づいたのは実際に環境を移行したのちだった。
そうすると。
N沼さんにいわれたように、価値観が変わった。
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Takehiro Yamada