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博打考




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 競馬で喰えると思っていた。
 つい最近――ほんの数日前まで。そのことに挑戦し、二、三年前、敗走を喫したというのにだ。あきらめてなかった。あきらめきれてなかった。
 再挑戦し、そして、気づいた。理論的に不可能だと。
 それは別に馬券が取れなくなったからじゃない。
 一度の敗走はたしかにそれが原因だった。また、馬券を当てれるようになれば……それがあきらめきれなかった理由でもある。


 何日か、大井競馬場に通い、馬券を買った。最初こそ負けていたが、手応えのようなものも感じていた。いけるのではないか、と――が、そんなこととは関係なく、気づいてしまった。
 回収率についてだ。


 どんな博打でもそうだが、つねにテラ銭との戦いの部分が存在する。
 日本の競馬では購入された馬券の 25 %が主催社にまず、とられる。そして、残った 75 %分が当り馬券に配当される。そういうシステムだ。ゆえに単純な確率計算では馬券の期待値は 75 %になる。つねに赤字になることが運命づけられているわけだ。
 逆にいえば、何も考えず、適当に馬券を買っても 75 %のお金は戻ってくる。


 馬券で喰うためにはまず、この 25 %の壁をクリアする必要がある。他人よりもより正確に馬券を当てること――それが第一になるわけだ。
 ぼくは単勝と複勝にしか手をださないが、その理由のひとつにそのことがある。
 単勝と複勝の馬券に限っては、主催社から約 5 %のペイバックがあるのだ。だから単勝と複勝の馬券に関しては期待値は 80 %なのである。少しでも回収率をあげようと思うなら単勝、あるいは複勝馬券で勝負した方がいい。


 ちなみにぼくがかつて馬券まみれになっていたころの回収率は 83 %だった。


 情けないかぎりだ。
 それでも 3 %分だけ人に先んずることができたともいえる。ま、赤字であることは同じだが。ぼくの知人はだいたい 92 %だった。馬連でのこの回収率はかなりいい数字だが、それでも赤字にかわりはない。


 回収率が 100 %をこすことは可能か?


 可能だろう、とぼくは考えていた。だからこそ、馬券で喰えると信じていたのだ。つい数日前まで――。かなり難しいだろうが、可能だろう、と。


 いつもそこで思考は停止していた。
 その日はなぜか、先へ進んだ。
 100 %をこすことができたとしてそのときの回収率はどのくらいか?
 答えはよくて 110 %というものだった。この数字に根拠はなにもない。しかし、おそらくそのあたりが現実的な数字だろう、という気がした。ぼくの馬券のスタイルではそのあたりが限界だろう、とも。


 つまり年収 300 万を稼ぐには 3 千万を投資する必要があるということだ。


 もちろん、一度に 3 千万が必要だというわけではない。1 万を 3 千回、回してもいい。
 ところが一年に行なわれる競馬の日数は限られている。JRAだけなら約 100 日―― 1 日の投資額は 30 万ということになる。プロの馬券師に梶山徹夫という人がいるが、競馬場に赴くときは財布に 30 万、いれていくという。つまりその金額は妥当なのだ。


 一日に 30 万。
 とてもじゃないが、ぼくにはそんな真似はできそうにない……三日連続、負けただけで 100 万近くの赤字になるのだ。かつて馬券まみれになったときですら、ぼくに可能だったのは 10 万だった。
 もちろん、365 日、競馬に行き――関東ではJRAと公営競馬へ行けば、可能だ――回収率を少しでも上げることができれば、喰えるようになれるかもしれない。数値的には。


 しかし。
 もう夢見ることはできそうもない。
 馬券で喰える、と……。


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Takehiro Yamada